「肥満者は循環器病リスクが高いです。メタボ健診は健診の結果を受けて、薬による治療を始める前に、食事や運動習慣を見直して循環器病の発症リスクを低くしようという“攻めの予防”の試みです」(同)

 しかし、こうした健診で指導されなくても、循環器病のリスクがある場合がある。健診がリスクを見つけるものであるのに対して、ドックは重大な病気の元を見つけるのが目的だ。循環器領域では、破裂前の脳動脈瘤などを見つける「脳ドック」が知られるが、それ以外の部位の循環器系ドックは検査・診断技術が難しく、実施する病院はそう多くない。

「当センターには多くの専門医がおり、ドックの結果を的確に判断し、異常があればすぐに治療に進むこともできます。がんのドックで異常が見つかったとき、予防という選択肢はなく、病状の説明をし、治療を勧めることになります。循環器病でも同じことをおこなうのが“攻めの予防”から一歩前進した高度循環器ドックです」(同)

 CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴断層撮影)はもちろん、心臓超音波や心磁図などからだへの負担が少ない検査機器を駆使し、1泊2日の入院で、頭から足先まで全身の血管を隈なく調べる。

 メタボ健診では指導対象にならない高木さんだが、高度循環器ドックの「心臓MRI検査」で冠動脈プラークの存在を意味する高信号が発見された。プラークとは血管にたまったカスのようなものだ。
「他の検査の結果から虚血(血流不足)はありませんでしたが、将来的に心筋梗塞を起こす確率が高いため、降圧治療を強めるという判断になりました」(同)

 高木さんのように健診で指導対象にならなかった人が、高度循環器ドックを受け、循環器病発症の芽を摘んだケースは少なくない。菅野弘さん(仮名)もその一人だ。80歳になる菅野さんはBMI20と痩身の部類に入る。この年になるまで循環器病にならずに暮らしてきたが、脳卒中にでもなって周囲に迷惑をかけるのも、という気持ちで受診した。

次のページ