高度循環器ドックでは、病気の元となる血管の異常を隈なく検査する(提供:国立循環器病研究センター)
高度循環器ドックでは、病気の元となる血管の異常を隈なく検査する(提供:国立循環器病研究センター)

 脳卒中や心筋梗塞など血管の異常で起こる病気は、健康に見える人にも突然襲ってくる。突然死を招くこれらの病気を研究する最先端の国立機関が、国立循環器病研究センター(以下、国循)だ。発売中の週刊朝日MOOK「血管を強くして突然死を防ぐ! 脳卒中と心臓病いい病院」では、病気のリスクをいち早く見つける、国循式の“攻めの予防”を追った。

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 大阪府在住の高木良介さん(仮名・61歳)は、高血圧の服薬治療は受けているが、BMI24と肥満ではなく、コレステロール値や中性脂肪、血糖値は正常範囲で、会社の健診で指導対象となることはなかった。定年を迎え、第二の人生を楽しもうと思っていたとき、国循の「高度循環器ドック」の存在を知った。

 高度循環器ドックは2013年から始まった。循環器病にかかわる血管の異常を調べるために16点もの精密検査を受けられる。ドックでは、自治体や会社でおこなう「健診」や特定健康診査(メタボ健診)では見逃されていたリスクが発見できるという。

「健診では、循環器病のリスクがわかります。血圧や血糖、コレステロールなどを測定し、将来、循環器病になる危険性を見ています」

 こう話すのは、国立循環器病研究センター病院(大阪府)予防健診部長の宮本恵宏医師だ。

 なぜ、このような健診がおこなわれているかといえば、脳卒中や心筋梗塞など重大な循環器病が発生した場合は治療を急ぐ必要があるが、検査値異常の段階で生活習慣を見直し改善すれば、循環器病の発症を防げるからだ。

「循環器病の多くは血管の動脈硬化が原因です。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの有無や程度で動脈硬化の進行の速さは決まるため、生活習慣を見直して検査値を改善したり、動脈硬化の原因となる疾患を治療すれば、循環器病は予防できます」(宮本医師)

 自治体などでおこなう健診で、肥満が高血圧や糖尿病、脂質異常症の原因になるとわかって始まったのがメタボ健診だ。40~74歳を対象とするこの健診は内臓脂肪に着目し、腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上で、血圧や血糖値、脂質に異常があれば、生活習慣を改善するよう具体的な指導がされる。

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