ひとつが、“6回の壁”だ。今季20回先発した中で、7回のマウンドに立って勝利したのは3度のみ。2011年ドラフト1位右腕は1球1球の質を見れば球界でも高い能力を誇るものの、先発として周囲を安心させられるレベルに達していないのは、試合中盤から終盤に投げミスを犯すことがままあるためだ。

 コントロールは決していい方ではなく、加えて真っすぐにヤマを張られることでファウルが増える。そうして球数が増え、試合中盤の失投につながってしまう。夏場のうだるような暑さに包まれたメットライフドームでそんな話をしていると、十亀は自身の課題を語り出した。

「結局抑えてはいますけど、ひとりのバッターに対して球数をかけすぎています。そういった意味の課題として、ウイニングショットをどうするのかをずっと考えているところです。もっと真っすぐを生かすためにカーブやシンカーを放るとか、もうひとつ自分が何か進化しなければいけない。いろんな可能性を含めた部分で模索中です」

 10月2日の楽天戦では、そうした意味で進化の兆しが見えた。ウイニングショットとしてカーブをうまく使っていたのである。

 特に手応えを感じたのは、4回2死1、2塁で左打者の岡島豪郎を空振り三振に仕留めた場面だ。5球目までにストレートを4球投げて意識させ、最後に内角低めのカーブでバットに空を切らせている。

「真っすぐを待っての空振りだったと思うんですよ。で、いい高さに来たからこそあの三振が生まれた。(投げる方として)緩いボールは難しいし、(甘くなると打たれるから)紙一重のところがあると思います。でも、僕自身は緩い球を投げて打たれて、それだったら真っすぐを投げておけば良かったという思いであのカーブは投げていない。あれを打たれたらしょうがないと思っていますし、カーブとスライダーは投げミスがそんなになかったと思います」

 そう言った後、十亀は最後の言葉を加えた。

「本当にあの1球ですよね、結局……」

 決め球のカーブを効果的に使って試合中盤まで無失点に抑えながら、最も自信のあるストレートを捕らえられた。終わってみれば、それが致命傷になった。

 ウィーラーに痛恨の本塁打を打たれた場面でどんなボールを選択すれば良かったのか、後から振り返っても決して正解を出すことはできない。たとえいい球でも打たれれば不正解であり、どんな失投でも抑えれば結果オーライになる。特にCSのような短期決戦では、その意味合いが強い。だからこそ、失投が許されないという投手心理が働きやすくなり、それが投げミスにつながることもある。

 結局、結果しか正解のない世界なのだ。短期決戦のポストシーズンはそれゆえ、極度の重圧に包み込まれる。

「(相手先発が)則本でも岸(孝之)さんでも美馬(学)さんでも、ああいう接戦勝負になると思います。そこでミスがなかった則本と、ミスがあった僕というところでした。あの1球を無駄にしちゃいけないし、糧にしないといけないと思います」

 初戦で菊池が勝てばファーストステージ突破の可能性が高まり、仮にエースで敗れれば後がない一戦となり、いずれにしてもプレッシャーを受けてのマウンドになる。試合中盤から終盤の勝負どころで十亀がどういう選択をして、どんなボールを投げるのか。

 “あの1球”を受けて臨む楽天とのリベンジマッチ。プロセスはもちろん、結果という一点を凝視したい。(文・中島大輔)