他の子どもの短冊には、ケーキ屋さん、お花屋さん、ライダー、レンジャー、プリンセスなど、(一応)人間を超えない範囲内の願い事が書かれていました。「うん……、ハチミツおいしいもんね」と否定はしない返事をしながら、思い出したのはローゼンタール。そうです。彼のような、ウソをウソと思わせない、飄々とでまかせを言える力は、実は育児界で立派に役立つものだったのです。

 私は「ハチミツが食べたいなら、ハチより養蜂場に勤めるほうが簡単ではなかろうか」という現実的で小難しい話をすることなく、「まことならきっとなれる」と言い切って短冊を提出しました。コツは、他の親の目を気にしないことです。

 ちなみに息子は、プーさんが風船で空を飛び木の上のはちみつを取ろうとする有名なシーンで「風船下りて! 下りてよ!」と激怒し、プーさんではなくハチの味方をするほどのハチ好きです。先日はお店でハチのマークがついたバッグを欲しがりました。なんとなくですが、この子いつかハチに刺されるんじゃないかな?

(文/杉山奈津子)

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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