奨学金による自己破産者は1万人を超えると言われている中、多額の奨学金返済を背負い、その思いをコラムで書いている元SEALDs諏訪原健さん。奨学金に翻弄され続けた地方公務員の女性(25)のケースを取材した。
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「奨学金のことがなかったら、今頃家族は仲良くしていたんじゃないかと時々思うことがあります。そう考えると、つらいですね」
奨学金に関するインタビューの途中、美咲さん(仮名)は電話越しでそんな言葉を口にした。なぜ彼女は「奨学金がなかったら……」と語るに至ったのか。彼女の奨学金と家族にまつわる話を聞かせてもらった。
彼女は現在25歳。社会人3年目で、地元の近畿地方で地方公務員として働いている。大学は実家から離れた東海地方にある国立大学に進んだ。家庭の経済状況が芳しくなかったため、奨学金を借りての進学だった。
彼女が借りた奨学金は、第一種(無利子)が月5万1千円と、第二種(有利子)が月12万円。学部4年間で利子も含めて考えると、返済総額は1000万を超える。彼女自身は、「自分で管理して、自分で返済していく」つもりだったが、父親からは「卒業したら俺が返していくから、何も気にするな」と言われていた。彼女もその言葉を信じていた。
大学に入学するにあたって、彼女は「今までできなかったことをやりたい」という思いを抱いていたという。そんな思いもあって、彼女は入学してすぐに体育会の部活に所属することを決めた。アルバイトもしなければならないが、奨学金もあるので、うまく両立していけるだろうと思っていた。
しかし学生生活は、金銭的な問題で思うようにはいかなかった。奨学金が振り込まれるのは母親の口座になっており、学生生活にかかる経費は、母親から彼女の口座に振り込まれる約束になっていた。それにもかかわらず、生活費すら振り込んでもらえない。「いくら頼んでも振り込まれるのはせいぜい月に1万円。2万円だったら今回は頑張ったな……という感じ」だった。