社会福祉協議会が山本さんの自宅を訪問し、支援計画を立てて契約を結び、税金や公共料金、医療費など日常生活に必要なお金の管理のほか、印鑑や預金通帳の保管もしてもらえることになりました。

 経済的な負担を軽くしたりお金のトラブルを防いだりする制度やサービスはいろいろあります。すぐには必要ない場合も、早めに相談しておけば不安が軽くなります。

【■ケース4】 家族を支援する
会社員の前田里香さん(仮名・45歳)は、2年前に認知症と診断された母、喜美さん(同・71歳)と二人暮らし。最近は昼夜問わず徘徊するようになって、夜中に起こされ昼間も目を離せなくなり、仕事を休まなければならないことが多くなりました。「認知症は恥ずかしいこと」と思い込んで誰にも相談できず、「会社を辞めるしかない」と思い詰めてしまったそうです。

 あんしんすこやかセンターの職員が訪問すると、里香さんは疲弊し、「自宅で一緒に暮らしていきたいけれどきつく当たってしまう」と自分を責めていました。

 そこで、「少しお母さんと離れてみては。ショートステイを利用してみませんか」と提案。喜美さんが1週間施設で過ごす間、里香さんに心身を休めてもらうとともに、看護師が面談し、徘徊を防ぐにはどのように接したらいいのかといったことをアドバイスしました。

 また、要介護4にもかかわらずあまり介護保険サービスを利用していなかったので、デイサービスを増やすなどケアマネジャーが介護プランを組み直しました。

 喜美さんはショートステイをしたことで施設に慣れ、デイサービスに嫌がらずに行くようになりました。里香さんは疲れた時や出張の時などショートステイを利用しながら、仕事を続けています。お互いに余裕ができ、里香さんが適切な対応をすることで母娘の関係はよくなり、喜美さんが徘徊することもなくなりました。

 また里香さんには、介護している家族同士が交流する「家族会」を紹介しました。家族会では、さまざまな情報を得られるばかりでなく、つらいことや困っていることを相談することもできます。

地域包括支援センターは、最初の相談窓口。何かおかしいと感じたり、どこに行けばいいかわからなかったりする時はまず、地域包括支援センターに相談することで、適切なサービスにつながります。世田谷区高齢福祉部の高橋裕子課長はこう話します。

「高齢化が進むなか、認知症は誰でも関わる可能性がある身近な病気です。認知症の人を含む高齢者にやさしい地域をつくることが、誰もが安心して暮らせる地域をつくることにつながります」

(取材・文/谷わこ)