錦織圭、84年ぶりの「全仏4強」を逃した“分岐点” (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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錦織圭、84年ぶりの「全仏4強」を逃した“分岐点”

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内田暁dot.
全仏準々決勝、試合後にマリーと握手する錦織圭(写真:Getty Images)

全仏準々決勝、試合後にマリーと握手する錦織圭(写真:Getty Images)

 全仏オープンの大会11日目、男子シングルス準々決勝。

「アンディに、火がついたな……」

 その時、記者席で試合を見守っていた英国紙『ザ・テレグラフ』の、サイモン・ブリッグス記者がつぶやいた。

 第1セットを奪った錦織圭が優位に進めていた、第2セットの序盤戦――。第3ゲームのデュースの場面でサーブのトスをやり直した際、アンディ・マリーはこの日2度目タイムバイオレーション(遅延行為)の警告を受けた。2度目の警告は、ファーストサーブを失うことを意味する。

「トスをやり直しただけじゃないか!」

 審判台に詰め寄りマリーは激しく抗議するも、一度下った判定が覆ることはない。紅潮した顔に怒気を浮かべていたが、マリーは怒りを腹にしまいベースラインへと戻ると、高く弾むキックサーブを打ち込んだ。打ち返した錦織の打球が大きく逸れていくのを見届け、スタジアム中に響く声で「レッツ・ゴー!」と叫ぶマリー。さらには続くポイントでも、鋭いサーブで錦織のリターンを弾き、フォアの強打を叩き込む。再び世界1位は、自らを鼓舞するように「レッツ・ゴー!」と吼えた。そのマリーの姿が、長年取材してきた英国記者の目には「火がついた」と映ったのだろう。そしてその思いはもしかしたら、これまでマリーと9度の対戦を重ねてきた、錦織も同様だったのかもしれない。続くゲームで「焦った」がためにミスを重ねた錦織は、この試合初めて自身のサービスゲームを落とす。すると「ちょっとずつリズムが狂いはじめ」、以降の3ゲームも連続で失うことに。それまで手にしていた主導権が、するりとこぼれ落ちた試合序盤のターニングポイントだった。

 第1セットの錦織は、自身も「これ以上ないようなプレーの内容と結果がついてきた」と自画自賛する圧巻のプレーを、センターコートに描ききった。錦織が常に攻勢であるその事実は、両者がボールを打つ際のポジションとして、目に見える形で浮き彫りになる。錦織はベースラインから下がることなく、一打ごとに前に前にと踏み込んでいく。対するマリーはボールが打ち込まれるたびに左右に走らされ、ジリジリと後方へと押し込まれる。ラリーを重ねるごとに相手の時間を削り取り、空間を奪っていく錦織のテニスに、世界1位は明らかに自信を喪失して、いら立ちをつのらせていた。


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