近代化の流れで新暦を取り入れた中国でも、「春節」をはじめ、「端午節」「七夕」などの伝統行事は旧暦で行なっている。また中国だけに限らず、新暦と旧暦の両方を使っている国々も多く、仏教国のタイでは「仏暦」を使い続け、イスラム教諸国では西暦、イラン歴、イスラム暦の3つを使いこなす国もあるという。千葉氏は、季節ごとの伝統行事を大切にするためにも、日本でも、新暦と旧暦を併用する「文化の二重帳簿」が望ましいと提案する。

 そうはいっても、日本では明治5年以来ずっと新暦のみを採用しているため、旧暦で考える習慣はすっかり忘れ去られ、新暦と旧暦を結びつける発想を持たない人がほとんどだろう。そんな現代人が手軽に利用できるのがスマートフォン用の“旧暦アプリ”だ。千葉さんが実際に使用しているのが、月の満ち欠けと日本の旧暦カレンダーを表示する『月読君(つくよみくん)』というアプリ。インストールすれば、旧暦と西暦のカレンダーが見られ、過去と未来の情報を検索することもできる。

 アプリの他にも、旧暦を載せた手帳も人気となっているが、なかでも「旧暦初心者」向けの最強グッズが、昔ながらの紙製の「日めくりカレンダー」だ。1枚の紙に、その日の日付、旧暦の日付、月の形、二十四節気七十二候、六曜、干支が網羅されており、自分でめくることで、日常的に旧暦になじむことができる。

 旧暦を採用して暮らすのは難しいかもしれないが、「季節を楽しむ」という意味では、月の満ち欠けを意識したり、日の長さ短さを感じたりすることは第一歩といえるかもしれない。季節を表す言葉と、実際に感じる季節に違和感を覚えたら、旧暦を調べてみてはいかがだろうか。