台湾・台北市にある中華民国総統府(※イメージ写真)
台湾・台北市にある中華民国総統府(※イメージ写真)

 もうすぐ旧正月である2月19日を迎える。大晦日にあたる2月18から24日の間を、韓国では「ソルナル」、中国・台湾では「春節」と呼び、韓国では故郷に帰省する人の多さを「民族大移動」と揶揄(やゆ)するほどの年中行事となっている。この期間は日本の正月休みに相当する休暇となるため、中国や台湾から多くの訪日客が見込まれ、日本の観光業界やデパート業界では、春節シーズンは新たな商戦期となりつつある。

 日本の正月とはほぼ1ヶ月遅れでやって来るこの旧正月だが、来年は2月8日、再来年は1月28日と、毎年日付が異なっている。日付が異なるのは、中華圏や韓国、ベトナム、モンゴルなどの地域で、今でも「旧暦(太陰太陽暦)」を使用しているからだ。

「新暦(太陽暦)」と「旧暦」という言葉を耳にしたことはあっても、その違いを正確に理解している人は少ないだろう。地方などでお盆などの年中行事を月遅れで行っていることもあり、「旧暦=月遅れ」だと思っている人も多いようだが、実際は「ひと月」のカウントの仕方が違う。

 旧暦は、月の満ち欠けのサイクルに基づいて1カ月を定めている。そうすると1カ月が約29.5日にしかならない。1年間は29.5日×12カ月=354日となり、「新暦」の1年365日と比べて、10日ほど少ないことになるのだ。そこで数年に1度、閏月(うるうづき)を設けて、1年を13カ月とする年を設けて調節する。それゆえ、春節の日付は毎年変動することになるのである。

 その昔、中国や韓国と同様に旧暦を用いてきた日本では、明治5(1872)年に「改暦」を行い、現在の新暦に切り替えた。しかし、四季の変化に富んだ日本では、太陽の運行に基づいて作られた新暦で生活していくと、季節感にズレが生じることも多々あると、『日本人が忘れた季節になじむ旧暦の暮らし』の著者・千葉望氏は指摘する。

 たとえば正月。新暦の1月といえば、冬の寒さがこれから本番を迎える時期でもあり、年賀状に踊る「新春」や「賀春」という言葉に違和感を覚える人も少なくないだろう。それでもなぜ年賀状に「春」という言葉を多用するのかといえば、旧暦でいう正月は1月下旬~2月中旬にあたり、梅のつぼみがほころび始めたり、春の訪れを感じるようになったりと、まさに「新春」気分が高まる頃合いといえるからだ。

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