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「おもてなし」で最も大切なことは「距離感」と…?

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 2020年に開催される東京オリンピック。招致レースの最終プレゼンテーションで、フリーアナウンサーの滝川クリステル氏の素晴らしいスピーチは多くの人の心を掴み、招致成功の最大要因とも言われている。そんな彼女の、流暢なフランス語で話されたスピーチの中で、唯一使った日本語が「おもてなし」だった。

「東京は皆様をユニークにお迎えします。日本語ではそれを『おもてなし』という一語で表現できます。それは見返りを求めないホスピタリティの精神、それは先祖代々受け継がれながら、日本の超現代的な文化にも深く根付いています。『おもてなし』という言葉は、なぜ日本人が互いに助け合い、お迎えするお客さまのことを大切にするかを示しています」(滝川クリステル氏の最終プレゼン冒頭部分より)

 その後、テレビ番組や雑誌など各メディアで「おもてなし」が話題になり、この言葉に大きな注目が集まったことは記憶に新しい。とはいえ、私たち一般の日本人が本当に「おもてなし」の精神を持ち合わせているだろうか? また、その精神を実践できているだろうか?

 本書『超一流 おもてなしの心・技・体』(朝日新書)は、ビジネスでも使える「おもてなし」の極意を教えてくれる一冊。25年間、全日空でトップCAとして皇室関係者や各国元首ら世界のⅤIPをもてなしてきた里岡美津奈氏が実践的なアドバイスで「おもてなし」の心・技・体を伝授する。

 例えば本書では、サラリーマンの接待を例に挙げて「おもてなし」について解説している。

 得意先の接待、特にプロジェクトの受注契約がかかった大事な接待となると、完璧に成功させたい一心で「席順は大丈夫か」「料理は間違いなく手配されているか」「お出迎えには誰をあてるか……」など細かい段取りにがんじがらめに縛られてしまうことがある。あの人はその席じゃないのに…… とひとつでも段取り通りにいかないとパニック状態になることもあるかもしれない。里岡氏は、こうなってしまうと“おもてなしをする側”が疲れ切って、もてなそうという気持ちが薄れ、結果として、ただの「業務」になってしまい、その接待は成功とは呼べないものとなると忠告する。

 では、このような失敗をなくすためにどうすればよいのか。

「おもてなし」で最も大切なことは「距離感」と「タイミング」であると里岡氏は言う。なぜなら、 おもてなしは「何をしたかより、その結果、お客さまがどう感じたかの方が重要」(本書より)だからである。自分と相手の間に成り立つのがおもてなしであるから相手に合わせることが大切になってくるというわけだ。

 里岡氏は、この「距離感」と「タイミング」を上手くとるためキーワードとなるのが「挨拶」だと語る。

 挨拶をした時にこちらの目を見てくれるか、表情は固くないかなど相手の様子を観察し、その感触で距離感を決め、その際不快感を与えないように、相手の状況を確認したタイミングの良い挨拶をすることが重要となる。挨拶を儀礼的なものにせず、相手を観察するために使うことがよい「おもてなし」につながるヒントになるというのだ。

「超一流のおもてなしとは、短い時間の中でも、大勢のお客さま一人ひとりに対して、その方が必要とするサービスを、最も適切なタイミングで提供、提案できること」(本書より)

 なお、先ほどの接待の例では、おもてなしをする側が事前に決めた段取りですべて進めようとするよりも、大枠の時間と予算を押さえたら相手の様子を観察しながら柔軟に対応できる余地を残しておくことが、よい「おもてなし」につながるという。もてなす側も余裕を持って一緒に楽しむことが大事ということだ。

 滝川氏が世界に語りかけたように、おもてなしが「先祖代々受け継がれながら、日本の超現代的な文化にも深く根付く」ものかどうかは別として、その精神をしっかり理解し、上手に体現することは、ビジネスではもちろんのこと、日常生活でもよい関係作りにつながるはず。超一流のおもてなし術が披露されている本書、コミュニケーションをもっと円滑にしたい人に読んでもらいたい一冊である。


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