私は指折り数えて12月の後半を待った。目から煙が出るくらい、飲食店などでたまたま隣の席に並んだ人すらガン見して絶対に見逃さじ、と待ったのだが……いっこうにそれらしき男性が現れないのだ。辛抱できず、Mさんに連絡した。「あー、まだ出会えてないわね。12月いっぱいまで見てね」って、すでに12月26日だぜよ!
そしてあっというまに31日を迎えた。大晦日なんかに、出会いとかあんのかーい!出かける予定は姉と年越しご飯の約束のみ。万事休す、の予感しかない。
Mさんとは15年来の仲で、これまでにも鋭い能力で私や友人の数々の局面を的中させ、驚かせてくれた凄腕霊能者ではあるが、さすがに今回ははずしたな……と姉の家で「ゆく年くる年」の除夜の鐘をききながら諦めがついた。運命の出会いなんてそんなにすぐ訪れるワケないじゃん。しょせんは「霊能だもの。BYみつを」年越しのシャンパンがやけに沁みる。期待した鼻息の数だけシャンパングラスの泡が弾けて2016年と一緒に消えていった。
明けて心機一転、2017年の1月8日、親しい男友達から彼の友人たち10人程度の新年会に誘われていたのを、所用のため宴会の終わり近くに遅れて到着した。
促されるがままに小上がりに座った瞬間、目の前のVシネマ風の男性が「中瀬さん、やっと会えましたね。BY 辻仁成」と豪快に笑い、すっと握手を求めてきた。彼は私の友人の親友らしく、名前だけは何度も聞いていたが初対面。
2次会が終わったタイミングで、意気投合した銀座のママと六本木方面に帰るついでにもう1軒飲みに行こう、とタクシーを止めると、逆方向に帰るはずの彼も当然のように乗り込んできた。私の8歳年下、44歳の彼があまりにも男っぽく面白く頼りがいがあるので、飲み始めてすぐ、私は彼を「アニキ」と呼び、その時点ですでにすっかり仲良くなっていた。
そして西麻布の小さなバーで飲み始めしばらくすると彼が唐突に、「彼氏いるんですか?」と聞いてきた。「未亡人2年生だよ、いるわけないじゃん!アニキは?」彼はニッコリ笑って、「奇遇ですね。僕もバツイチで、彼女いないんですよ」。その瞬間、運命の除夜の鐘が1週間遅れで鳴った……気がした。霊能にはこのくらいの時差がつきもんじゃないの?と、もはや自分に都合のいい風にしか考えられない52歳の新春だった。