「悲劇は人を変化させるが、喜劇は変化をこばむ」という一文をなにかで読んで刺さった。たしかに、パートナーだった白川道(トウチャン)と暮らして笑いまくっていたあの頃はまるで毎日が喜劇で、私は良くも悪くも変化しなかった、というより、いまある幸せを何一つ失いたくなく、変化を拒絶したのだ。だが彼を喪った悲劇は私を、私の人生観を、良くも悪くも劇的に変えた。人は必ず死ぬ。必ず失う生き物なのだ。そのどうしようもなく当たり前のことをはじめて当事者として脳が認識し、私はただ一回きりの人生をもう一度愛するひととやり直して、そして今度はトウチャンのときにやらかした数々のこと(たとえばお金とか時間の使い方とか)を生かして成長していく、と、1周忌の夜にトウチャンの遺影と自分に堅く誓っていた。
そこから半年の月日が流れた2016年の11月に、エステがわりにデトックスに訪れる旧知の霊能師Mさんの元を訪ねた。占い師、霊能師めぐりは実はわたしの30年来の密かな趣味だ。もちろんすべて当たるわけでもないが、たまに鋭いことを言い当てられたりもするので薄目で聞いている分にはなかなか面白い。
Mさんは開口一番、「わ!中瀬さん、来月中に運命の男性との出会いがついにあるわね」と言った。「何日かまでははっきり視えないんだけど、12月の後半ね」。「え、え!それは昔の知り合いと再会するみたいなことも入っているんでしょうか?」(当時、寂しさに突き動かされて昔のボーイフレンドと連絡をとったり、毎週のように違う男性とご飯を食べていたので)と聞いたが「いえ、まったく初めて会うご新規さん。その方が中瀬さんの人生のパートナーになりますね」と言うではないか!!
私は文字通り前のめりになり、机に半身を乗り出した。「そ、その人はちゃんと見逃さずにわかりますかね」「運命だもん、見た瞬間に化学反応があるから大丈夫。魅力的な男性です。年下みたいね。向こうも一目でゆかりさんを好きになりますよ」。そんな僥倖のようなことが、52歳のオバはんにあるってか!マジか!