「娘たちからは、それほど仲のいい夫婦には見えませんでしたが、50年近く共に過ごした伴侶を亡くしたことは、私たちが想像するよりも精神的なダメージが大きかったんでしょう。母が体調を崩してしまいました。夫婦のことは外から見ただけではわからないことを知らされた気がして、ふたりでいる時間を大事にしなければいけないと改めて思いましたね。私が日本に残ることを夫は快諾してくれたので心置きなく、家のことや母の面倒を見ることができました。海外で暮らしていると親や姉妹にアクシデントがあってもすぐに帰って来られないのがつらい。それでも、結婚してからも1年に1回は必ず帰国しています。そんなとき、夫は私の親へのお小遣いまで持たせ、快く送り出してくれるので、母も私も本当に感謝していますね。幸い母も元気を取り戻しましたが、いずれは介護が必要になるかもしれません。これについても夫は理解を示し、介護体制などいろいろ話し合っています」

■文化や習慣の違いを認め、お互いを思いやりながら生活する

 国際結婚は何かあってもすぐに帰国できないなど大変なこともあるが、文化や生活の違いが楽しいという。

「夫は日本語も上手ですし、読み書きも普通にできるので、日常会話は日本語です。それも結婚の決め手のひとつでしたが、機嫌が悪くなると英語になるので、大きな嵐が来る前に上手くやり過ごせます。メンタリティはアメリカ。個人主義というか、クールなところがあり、“私たち”より、“私”という“個”を大事にし、周囲の意見に流されないんです。

 ひとりでも自分が正しいと思ったら、貫き通しますね。私も外資系で仕事をしていたので、慣れているつもりでしたが、それでも最初は、ちょっと戸惑いました。でも、、私の意見もきちんと聞いてくれますし、尊重してくれるので、慣れると、とてもラクです。日本では空気を読むことや忖度が大事ですが、こちらでは、そんな必要がほとんどありません。ただ、日本人なら、説明しなくても理解してもらえることがありますが、『黙っていてもわかる』ということが通用しないんですね。だから、細かいところで衝突することがあり、いちいち説明しないといけない。それが面倒だと思うことが、今でもありますよ。また愛情表現が過剰すぎて驚くこともたびたび。こればかりはいまだになれません(笑)。生活面では、自己管理がしっかりできていましたので、大変なことはなかったですね。最近は少しずつルーズになってきていますが、手がかかるということはありません。これは独身生活が長かった賜物のひとつじゃないかと思っているんです」

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