さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第55 回はジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港から。
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インドネシアのスマランにいた。ジャワ島の北海岸。ジャカルタとスラバヤのちょうど中間あたりにある街だ。
そこからジャカルタに出、バンコクに向かうことになっていた。普通なら、スマランから列車に乗ってジャカルタに向かい、そこからジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港に向かう。
しかしそのルートで悩んでしまった。ジャカルタ市内から空港へ向かう道の渋滞のせいだ。気が滅入ってくる。ときに1時間がたっても500メートルも進まない状態が発生する。電車という代替手段はない。「時間にかなりの余裕をもたないと乗り遅れる可能性すらある」と知人からもいわれていた。
スマランのホテルで航空券を検索した。ジャカルタまで安い飛行機はないだろうか。
「あった」
1時間ほどのフライトで、運賃は片道2400円ほど。この金額とジャカルタの渋滞を天秤にかける。スマランから飛行機に乗り、ジャカルタの空港で乗り換える方法にあっという間に傾いていった。
これなら空港内の移動だけですむ。あの渋滞に巻き込まれる心配はない。
こういう発想をしてしまうアジアの街……。ジャカルタ以外ではマニラ、コルカタあたりだろうか。とにかくひどい渋滞が街を覆っている。急激な経済成長にインフラが間に合わないのだが、その渋滞が飛行機の需要を増やしていく──。経済成長が急な国の傾向かもしれない。
スマランから乗ったのは、シュリヴィジャヤ・エアだった。午後1時半には、ジャカルタの空港のターミナル2に着く。乗り継ぐ飛行機は午後3時半にターミナル3を出発するインドネシア・エアアジアだった。乗り継ぎ時間は2時間ほどある。