「個人としては前半よりちょっと前にポジションを取った。相手がカウンターを狙ってきているのはもちろん分かっているし、ちょっと前に行きすぎたら怖い部分もあったので、そこは(吉田)麻也さんと話し合いながらあんまり前に行きすぎないというのと、バランスを取りながらというのはうまくできた」

 そう語るのはボランチの柴崎だ。長谷部がボールを持った時は柴崎がひとつ前のポジションを取りつつ右サイドハーフの原口元気もインサイドに寄り、酒井宏のスペースを空ける。柴崎が持てば、左の乾とトップ下の香川と絡みながら左サイドバックの長友を生かす。さらに柴崎がセンターバックを経由するサイドチェンジを入れることで相手の守備を広げ、中央を香川と乾が得意のコンビネーションで突破していくといった流れだ。

 日本の狙いが見事に表れたのは大迫勇也の決勝ゴールにつながるCKを獲得したシーンだ。すでに香川から本田圭佑に交代していた時間帯だが、その本田が流れるようなパスワークのアクセントとして機能した。そしてスイッチとなったのは柴崎だ。

 自陣左のスローインから長友、昌子源、吉田麻也、昌子とつなぎ、長谷部よりやや高い位置にいた柴崎が一度引いて受ける。そこから柴崎は長友とパス交換して右後方の吉田に展開。吉田は手前の長谷部に出し、そこから酒井宏、本田、再び長谷部とつないで、吉田、昌子、そして柴崎にボールが戻る。

 柴崎は左から引いてきた乾に縦のショートパスを出し、戻しのパスを斜めにリターン。大迫のポストプレーで前を向いた本田にボールが渡る間に、右を追い越した酒井宏がペナルティエリアの右端で受けてゴール前の大迫につける。そして大迫が粘って戻したボールを酒井宏がシュートした。最後は相手のディフェンスにあたってCKとなったが、柴崎が「相手の間、間に入って行きながら、いいテンポでボールが回って前向きで、より推進力を持ってできた」と振り返るシーンだった。

 こうしたプレーがそのまま数的同数のセネガル、ポーランドに通用するわけではないだろうし、そもそもコロンビアには疲労や負傷明けながら途中投入されたハメス・ロドリゲスが守備にほとんど参加できないという問題もあった。しかし大事なのは、前半途中のあまりよくない流れを後半に修正できたということ。そこに西野監督の戦術的な狙いも反映されており、ここからの戦いを考える上でも参考にするべき変更点だったことは間違いない。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行予定。

暮らしとモノ班 for promotion
大型セールAmazonプライム感謝祭は10/19(土)・20(日)開催!先行セール、目玉商品をご紹介