


「クレオパトラは、銀座のママみたいだなと思うんです。銀座の超高級クラブを経営する、政治から他愛ない話題までなんでもありの、やり手で頭のいいマダム。カエサルみたいな大物政治家を前にして、最初は『利用してやろう』と思っていただろうけど、接しているうちに人間としての好奇心もわいて、最終的に惚れちゃったんじゃないですかね。カエサルのほうは、そんなクレオパトラが何を目指しているのかよくわかっていて、その夢に共感し、刺激ももらえていたんだと思います」。
堅苦しいイメージの偉人たちが、ヤマザキマリさんの目を通すとイキイキと身近な存在に見えてくる。
このたびヤマザキさんは、累計8万部突破『エリア別だから流れがつながる 世界史』の特装版の装画を担当。カバー表にマリ=アントワネットとカエサルを描きおろし、裏は特別インタビューを掲載している。
ここでは、裏に掲載しきれなかったインタビューの一部をご紹介する。
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「友人になって、いろいろ語ってみたかったなと思うのはラファエロです。彼が無類の古代ローマ好きだったというのも大きいのですが、何よりルネサンスの画家の中では現代の漫画家に最も近い働き方をしていたんじゃないかと思っていて、そのへんの話がしてみたい。ラファエロは絵を主たる職にしていましたが、たくさんの弟子を抱え、おそらく手塚治虫や石ノ森章太郎さんみたいな感覚と責任感を持って仕事をしていたと思います」
『テルマエ・ロマエ』に登場させたハドリアヌス帝も惹かれる歴史上の人物のひとり。
「彼はローマ帝国の領地が広大になったからといって満足することはなかった。彼はまず自分の統治する帝国の領土を自分の目で見て確かめなければいけないと感じ、何度も旅をします。戦争をしたがらず、帝国の中枢であるローマを留守にしてばかりいる上、元老院に従わないハドリアヌスを、元老院議員らは良く思っていませんでした。
でもハドリアヌスは敏腕の建築家でもありましたからね。国の凄さは、決して『大きさ』だけでなく、『質』も大事であることや、人のこころを動かすのは『戦争で勝つ事』だけではないと気がついた、最初の皇帝だったんじゃないでしょうか。その点でもたいへん魅力的な人物だと思います。
あと、シチリア王のフリードリヒ2世が、やはり『多元性を持ち合わせていた権力者』という意味で魅力的な男性だった」と史上の「イイ男」について語り出すととまらないヤマザキさん。