■自民党県連の二階幹事長色を消す選挙戦
新潟県知事選が、中央政治での手詰まりを打破する大きなチャンスとなる理由は、野党には安倍政権を倒す力はないが、自民党には安倍総理を引きずり下ろす力があるということにある。どういうことか。
新潟県知事選は地方選挙だから、その勝敗は、中央政界とは関係ないというのが安倍政権の立場だが、実際は全く違う。ここで与党が負ければ、安倍政権の下では、地方選挙に負ける可能性が高いという証明になるからだ。来春の統一地方選の準備が本格化する中で、安倍では勝てないとなれば、秋の総裁選で、勝てる総裁に代わってほしいという声が地方で高まる。さらに、統一地方選で当選した地方議員は、19年夏に改選を迎える参議院議員、さらにはいつ解散総選挙を迎えるかわからない衆議院議員の選挙を支援する基盤になるので、地方の声は、国会議員票にも大きな影響を与え、地方での支持が高い石破茂氏が総裁選で勝利する可能性が高まる。
だからこそ、自民党、さらに言えば、安倍総理を支える主流派にとって、新潟県知事選は負けられない戦いになっているのだ。
しかし、こうした中央の思惑とは異なり、自民党新潟県連は、安倍総理やこの選挙を仕切る二階俊博幹事長とはかなりかけ離れた意識を持っているようだ。
それは、事実上自民党候補に決まった花角英世氏の選挙戦略に表れる。県連としては、安倍総理の不人気をとにかく遮断したいと考えている。そこで、自民色を消して、「無所属」の「県民党」という立場を前面に押し出し、市民連合側候補の池田千賀子氏と同様の「草の根選挙」をしているように装う作戦を立てた。花角氏と言えば、二階氏が運輸相だった当時の秘書官を務めた官僚で、土建屋利権の象徴のような存在だ。「県民党」とは笑わせると記者たちは鼻で笑っているが、いかに馬鹿にされようとも、自民色、二階色を消そうと必死なのである。
しかし、党本部、特に、二階幹事長の意識はこれとは全く逆。ここで、石破氏らの反主流派の力がなくても主流派の力で選挙に勝てることを誇示すれば、安倍総裁の3選への道が開けると考えた。そこで、選挙では、石破氏など反主流の応援は受けずに、しかも、自民党本部が前面に出る戦いをしようとしているのだ。