彼らに共通しているのは社会人で長所を生かしながら、課題を克服していったところだ。鈴木と石崎はスピード、加藤は球持ちの良さ、金子と吉見はコントロールがもともとの武器だったが、それを消すことなくスケールアップしている。それぞれの素材の良さはもちろんだが、社会人に高い育成力があることを証明した事例と言えるだろう。

 ここまで紹介した選手は高校から直接社会人に入っているが、それ以上に多いのが大学を経由して社会人入りしているケースだ。前回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の侍ジャパンの投手陣も大学、社会人経由でプロ入りした選手が多く、その顔ぶれは下記の通りである。

増井浩俊(駒沢大→東芝→日本ハムオリックス

牧田和久(平成国際大→日本通運→西武→パドレス)

石川歩(中部大→東京ガス→ロッテ

秋吉亮(中央学院大→パナソニック→ヤクルト

 日本代表入りするだけあって錚々たる顔ぶれだが、増井以外は地方の大学リーグ出身である。地方のリーグで結果を残してもスカウトに対するインパクトは強くなく、社会人でその実力を改めて証明してプロ入りを勝ち取った選手たちと言えるだろう。

 井納翔一(上武大→NTT東日本→DeNA)、祖父江大輔(愛知大→トヨタ自動車→中日)、谷元圭介(中部大→バイタルネット→日本ハム→中日)、石山泰稚(東北福祉大→ヤマハ→ヤクルト)、増田達至(福井工大→NTT西日本→西武)、高橋朋己(岐阜聖徳学園大→西濃運輸→西武)、平井克典(愛知産業大→Honda鈴鹿→西武)、佐藤達也(北海道東海大→Honda→オリックス)、松永昂大(関西国際大→大阪ガス→ロッテ)、有吉優樹(東京情報大→九州三菱自動車→ロッテ)などもこの枠に当てはまる。

 石川と井納は先発として実績を残しているが、他は見事にリリーフ投手の名前が並んでいるのがよく分かるだろう。また、井納も今季からは中継ぎに転向している。高校、大学では全国的に注目を集めるような存在ではなかったからこそ、リリーフという環境でも力を発揮できるとも言えるだろう。また、社会人野球の都市対抗、日本選手権など、負けたら終わりのトーナメントで活躍してきた経験が試合中盤以降の1点を争う展開での強さに繋がっている可能性も考えられる。年々リリーフ投手の重要性は増しているだけに、今後も彼らのような投手が重宝される傾向は続いていくだろう。

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古田や落合も社会人出身