こう見ると上位のソフトバンク、広島、阪神の成績はさすがであり、今年の陣容を見ても上原の必要性は低い。また楽天も若きクローザーの松井に加えて豊富な中継ぎ陣を抱えており、対象から外しても良さそうだ。また当然ではあるがその一方で両リーグ最下位のロッテヤクルトの弱さが目立つ。しかし両チームに必要なのは投手陣の根本的な立て直しである。上原がプレーできるのはおそらくあと1年か2年。そんな大ベテランが加入することによって、投手陣の新陳代謝が遅れることは避けるべきであろう。そういう意味では再建途上で既に松坂大輔を獲得した中日もおすすめ球団からは外したい。

 改めて上原の経験と実績、そして残りの現役生活が短いことを考えると、今年優勝を狙える球団が最後のピースとして獲得することが上原にとってもチームにとっても良いように思える。その観点で言うと、パ・リーグでマッチしそうなのは西武だ。昨年チームトップの32ホールドをマークしたシュリッター、チーム2位の28ホールドをマークした牧田和久がともに退団しており、実績のある高橋朋己も故障からの復帰途上。新外国人が機能しなければ台所事情が苦しくなるのは目に見えている。オフにエースの菊池雄星がメジャーに移籍することも濃厚であり、何とか今年優勝したいという球団の思いも強いはずだ。また過去にアメリカ帰りで外様の石井一久がチームにマッチしたという点も上原にとって追い風となるだろう。
 
 一方のセ・リーグでは古巣の巨人ももちろん候補になるが、それ以上に推したいのはDeNAだ。昨年はシーズン3位から日本シリーズ進出を果たしたものの、リリーフ防御率を見ても中継ぎの弱さは明らかである。山崎、パットン以外に60試合以上登板した投手は砂田毅樹(62試合)、三上朋也(61試合)、田中健二朗(60試合)の三人がいたが、全員が防御率4点以上という成績だった。今後の成長が期待された尾仲祐哉がFAで加入した大和の人的補償で退団したこともマイナス要素で、ドラフトの結果を見てもリリーフでいきなり中心選手になれる投手を獲得していない。そのような現状を考えても上位の広島、阪神と対抗するためのピースとして上原は最適な人材と言えるだろう。

 昨年までの上原の日米通算成績は134勝88敗128セーブ90ホールド。もし今年10ホールドを積み上げることになれば、プロ野球史上初の100勝100セーブ100ホールド達成となる。リリーフの重要性が増している現代野球において、この記録は通算200勝並みに価値の高いものであると言えるだろう。その快挙とともにチームを優勝に導いて引退する。そんなストーリーを描くことができる球団にぜひ入団してもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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