ストリートにおける麻薬販売は通常、グラム単位で販売されている。小袋に小分けにされていて、アメリカでは「BINDLES(ビンドル)」などと呼ばれる。ちなみに日本では「パケ」と呼ばれる。つまり、不純物でカサ増しをすれば、同じ重さでも含まれるヘロインの量が少なくて済むので、売れば売るだけ小売側の利益は大きくなる。だが、ユーザーにとっては、異物混入である。当然、効果も薄くなる。そうなると、騙されないようにするための駆け引きが生まれるのは必然である。もちろんユーザー側にも自衛のノウハウはあるようだ。
「Can you distinguish mixed drugs?」(混ぜものを見分ける方法はあるの?)
「Smell.」(匂いだ)
「Smell?」(匂い?)
「Yes. Pure heroin smell is like vinegar.」(上物は酢の匂いがする)
麻薬ソムリエらしく、素人ではわからない領域の解説である。日常的に接している人間であればあるほど、嗅覚のような敏感な器官に違和感を覚え、「おかしい」と気がつきやすいという。しかし、あくまで常用者に限ったことなので、もう少し、素人にも理解できるようにたずねることにした。
「What else?」(ほかには?)
「If you want to check it, please press with your finger. You can make it like a flake. It will not be crushed. 」(指で潰すんだ。混ぜものが多いと、フレークのように潰れる。砕けないんだ)
「Thanks a lot. I could get good information about drug.」(そうなんだ。勉強になったよ)
「You are real addict. Welcome new world!!」(これでお前も立派な中毒者になれるぞ。ようこそ新しい世界へ!!)
「No way! I just wanted to cover drug business only!」(それは勘弁してくれ。俺は取材にきただけだから)