世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。取材やインタビューの基本は英語である。それもブロークン・イングリッシュ。それゆえ、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした"ありえない英会話"を紹介する本連載。今回はアメリカのドラッグビジネスにかかわる人たちの表に出てこない攻防戦について、取材の裏側を明かす。
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世界の危険地帯でドラッグの取材をしていると、なかなか知り得ない情報を垣間見ることもある。以前、アメリカで売人やユーザー(薬物常習者)たちに接していくなかで、双方の駆け引きの裏側でどんなことをチェックして、何を考えているのかを知ることができた。どちらも、モノ(麻薬)に直接触れるプロではある。程度の良し悪しを見抜く目や知識は、素人とは比べるべくもない。そのあたりの事情に精通した人物、自称・薬物ソムリエの男が語ったのは、思いもよらないものだった。
「If I buy drugs, what should I be careful about?」(麻薬を買うときは何に気をつければいいの?)
「Stretching.」(「Stretching」だな)
「What dose “stretching” means?」(STRETCHINGって何?)
「It means mixing different things.」(混ぜものって意味だ)
「It is not pure heroin, right? What kind of things are mixed?」(ドラッグのカサ増しだね。何を混ぜるの?)
「Heroin was mixed with a milk powder.」(ヘロインだったら粉ミルクだな)
「Babies drink, right?」(赤ちゃんが飲むやつ?)
「Yes.」(そうだ)