事実、中国地方の県を対象とした「地域枠入試」をみると、岡山大学には岡山県枠、広島県枠、広島大学にはふるさと枠広島県コース、ふるさと枠岡山県コース、鳥取大学には鳥取県枠、島根県枠、山口県枠、山口大学には山口県枠、鳥取県枠、川崎医科大学には中国・四国地域枠、岡山県枠があり、中国地方の医学部は近県と連携して医師の定着を図っている、といえる。

 では、「長寿地方」の医学部がどのような対応を取っているのか。岡山大を訪れてみた。

■五輪選手の活躍が健康意識を高める

 岡山県はなぜ長寿なのか? という記者の問いに、岡山大学医学部の大塚愛二医学部長は、こう即答した。

「岡山大学病院があるからです」

 岡山大学医学部医学科は、1870(明治3)年に岡山藩が設立した医学館が始まりだ。その後、岡山県医学校、第三高等中学校医学部、岡山医学専門学校、岡山医科大学を経て、1949(昭和24)年に岡山大学医学部になった。「創立147年の歴史があり、約1万2千人の卒業生が医師になりました。1888年に、全国を五区に分けた高等中学校医学部の第三区(近畿・中四国)は、岡山に設置されました。このため、現在も近畿地方西部、中四国地方に多くの関連病院が.あることが特長です。関連病院の人事交流が活発なので、切磋琢磨して、医師として鍛えられ.ます」(大塚医学部長)

 岡山大学病院は、1998年に国内初の生体肺移植に成功したことで知られるが、死体肺移植も含めると141例で全国1位だ。肺移植の5年生存率は80%で、世界1位の術後成績を誇る。肝移植も単年度では全国2位で、国内初の脳死者からの肝腎同時移植も実施している。すべての臓器を移植できるのは、国内では、ここ岡山大学と東北大学だけだ。

 16年の手術件数は1万8411件。心臓血管外科の手術数は年間700〜800件で、先天性心疾患の手術数は全国3位。小児の心臓手術数は世界一だ。これらの臨床実績が、前述の自信あふれる言葉につながっているのだ。

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