「本学は中四国地方の最後の砦です。多くの関連病院の優秀な医師が治療しますが、難しいケースは岡山大学病院で治療します。このことが長寿につながっているのだと思います」

 大型国家プロジェクトである「臨床研究中核病院整備事業」「研究大学強化促進事業」「橋渡し研究加速ネットワークプログラム」「スーパーグローバル大学創成支援事業」の四つ全部に採択されているのは、旧帝大と岡山大学、慶應義塾大学だけだ。12年には、文部科学省の「グローバルな医学教育認証に対応した診療参加型臨床実習の充実」事業で同大のプログラムが採択された。16年6月にはJACME(日本医学教育評価機構)の評価も受けた。

 カリキュラムにも特長がある。1年次の早期体験実習では、岡山大学病院で外科医体験実習、救命救急体験、妊娠体験と分娩体験など10のプログラムを用意。1年次の夏休みには、地域枠入試で入学した学生と希望者が、1〜2週間の地域医療現場体験実習を行う。3年の5〜7月は「医学研究インターンシップ」。約7割が学内、約2割が海外、約1割が国内の他大学で研究する。

■瀬戸内海でとれる豊富な魚介類で長寿に!?

 岡山県が長寿なのは、医療環境が整っていることに加え、生活習慣なども関係しているのだろう。大塚医学部長は、長寿の理由をスポーツと結び付けて、こう考察する。

「私は21時から22時ごろに帰宅することが多いのですが、その時間に散歩している人たちに出会いますね。手を大きく振り、シャキシャキ歩いていて、『元気ええなぁ』って思います。アムステルダムオリンピックの800メートル走で銀メダルを獲得し、日本人女性初のメダリストとなった人見絹枝さん、バルセロナとアトランタオリンピックのマラソンでメダリストとなった有森裕子さんはともに岡山市出身です。彼女たちの活躍の影響もあってか、女子陸上、女子柔道、女子バレーなどが岡山県は強いですね」

 このほか、薄味で塩分の摂取量が少ない、瀬戸内海でとれる豊富な魚介類を食べている、フルーツ王国で桃やぶどうなどを食べている、などといった食習慣も「長寿につながっていると考えられる」という。

(文/庄村敦子)

※『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』から抜粋