松坂の入団するもう一つのプラス材料は他の選手に与える影響だ。ベテランの場合、若手選手へのコーチ的役割を期待されるケースが多いが、ソフトバンクからのコーチとしての申し出を断ったと言われている松坂の場合はそれは考えづらい。しかし、その一方でベテラン同士の相乗効果は期待できるのではないだろうか。特に2年間の低迷から昨年復活を果たした岩瀬仁紀の存在は、松坂自身にとっても大きなプラスになるはずだ。また年齢の近い山井大介、選手としての大きな分岐点に立っている吉見一起、浅尾拓也にとっては、ともに復活を目指す存在として励みになることも十分に考えられる。

 最後に期待したいのは、思い切った起用による起爆剤的な役割だ。2004年、就任1年目だった落合監督はチームを変えるという目的でFAで入団しながら3年間一軍登板のなかった川崎憲次郎を開幕投手に指名している。結局、川崎は打ち込まれたものの打線が奮起して逆転勝利。ペナントレースでも5年ぶりの優勝を飾ったのだ。現在のチーム状態は当時よりも深刻であることは間違いない。その現状を打破するためには、芝居がかった演出ではあるが、松坂を開幕投手に起用するというのも面白いのではないだろうか。

 ソフトバンクでの3年間を見ると、かつてのようにローテーションの中心として大活躍する姿は想像することが難しい。しかし、復活を夢見る気持ちを持っている野球ファンが少なくないのもまた事実である。また、いまだに去就の決まらない村田修一(前巨人)、梵英心(前広島)など“松坂世代”の選手たちも多くが選手としての岐路に立っている。そんな彼らにとっても、松坂が投げる姿は大きな刺激となるはずだ。フルシーズンの活躍はできなくても、勝負どころで戦力となるピッチングを見せる。そんな松坂の姿に期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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