ソフトバンク・柳田悠岐(c)朝日新聞社
ソフトバンク・柳田悠岐(c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまで半月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「珍打球&珍打編」である。

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 柳田悠岐(ソフトバンク)が改めて“持っている男”であることをアピールしたのが、6月6日のヤクルト戦(ヤフオクドーム)だった。

 1対1の延長10回裏、ソフトバンクは2死三塁とサヨナラのチャンス。だが、次打者・柳田は力み過ぎて、当たり損ないの三ゴロ。ボテボテの打球が三塁線に転がる。普通ならファウルになってもおかしくないところだ。

 久古健太郎、中村悠平のバッテリーも当然ファウルになるものと判断して見守っていると、なんと、ボールはまるで手品のようにラインの内側ギリギリにピタリ!この間に三塁走者・明石健志がサヨナラのホームイン。「まさか、まさか!」の推定飛距離わずか10メートルのサヨナラ打となった。

 久古は「ボールが切れていくように見えた。芝に取られて止まってしまった」と悔しげな表情。中村も「捕って投げてもセーフだった。勝負できるのは僕だったけど、間一髪で勝負するよりも、ファウルで切らそうとした」とまさかの結末に天を仰いだ。

 中村の判断は、けっして間違っていたとはいえない。野球漫画「ドカベン」に登場する殿馬一人の秘打「G線上のアリア」が現実の世界で起きたとしか言いようがない珍打球。人間離れしたパワーを持つ柳田の打球は、打ち損じでも“何か”が起きることを証明した。

 「打ったときは、“ヤバい”と思って走った」という本人も、「あんな打球は初めて。奇跡。打球はメチャクチャダサかったけど、フェアゾーンで止まって良かった」と勝利に貢献でき、ホッとした様子。

 ちなみに、柳田のサヨナラ打は2015年8月11日のオリックス戦(ヤフオクドーム)以来、通算4度目だが、過去3回はいずれも本塁打。期せずして、自己最短飛距離のサヨナラ打となった。

 「明日は打球飛ばします!」と宣言した柳田は、翌7日のヤクルト戦で右翼席最上段への特大先制3ランを含む2本塁打を放ち、有言実行。「昨日と違ってすごい飛んでくれたんで最高です」と2日連続のお立ち台で笑顔を見せていた。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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