「それがないんだよ。そういって通してもらって」
再び出口のおばさん職員のところへ。
「ないそうです。そういって通してもらえと彼が」
審査ブースにいる審査官を指さした。
「だめだね。ルールだから。そう彼にいいなさい」
「でも、用紙はないって……」
再びブースに戻って伝えるしかなかった。用紙探しがはじまった。20分ほど待っただろうか。別の審査官がどこからか、用紙を見つけてきた。
「ここには書くテーブルがないからあっちで」
と示されたのは、APCの機械が並ぶ脇だった。振り出しに戻ったような気分になった。
入国カードに書き込み、また審査ブースへ。指示されたのは別の審査官のいるブースだった。コンピューターに僕のデータを打ち込みながら、その職員がいう。
「もうアメリカに入国してるじゃないか。どうしてまたここにいるの?」
「だから……」
なんだか疲れるアメリカ入国審査だった。こんなことでいいんだろうか、アメリカは。やっと到着した搭乗口でため息、ひとつ。