「大腿骨骨折」で手術を受けたいたことを明かした黒柳徹子さん (C)朝日新聞出版
「大腿骨骨折」で手術を受けたいたことを明かした黒柳徹子さん (C)朝日新聞出版
大腿骨近位部骨折の発生件数の推移/日本整形外科学会骨粗鬆症委員会による大腿骨近位部骨折の全国調査結果。「頸部」「転子部」「不明」を合計した発生件数は、年々増加しており、年間10万人に迫る状況だ
大腿骨近位部骨折の発生件数の推移/日本整形外科学会骨粗鬆症委員会による大腿骨近位部骨折の全国調査結果。「頸部」「転子部」「不明」を合計した発生件数は、年々増加しており、年間10万人に迫る状況だ

 9月28日、舞台「想い出のカルテット」の公開稽古に黒柳徹子さん(84)が車いすで登場した。黒柳さんは写真共有SNS「インスタグラム」の自身のアカウントで、1カ月前に足を骨折し、手術を受けていたことを報告していた。骨折したのは、太ももの付け根にある「大腿骨」という部分だ。大腿骨骨折は年々増加しており、年間10万人に迫る。寝たきりの原因にもなるため、高齢者で深刻な問題となっている。そのリスクとは。

【グラフ】発生件数は年間10万人に迫る

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 近年、高齢者の増加とともに、大腿骨の骨折が増えている。高齢者は骨の強度が弱まっているうえに、筋力の低下による転倒を起こしやすい。転倒して大腿骨近位部骨折に至るケースが、高齢者では頻発しているのだ。

 大腿骨とは、太ももの骨のことだ。股関節として、球状の骨「大腿骨頭(こっとう)」が太ももの動きを可能にしている。大腿骨頭からくびれた細い部分を「頸部」、その下の太い部分を「転子(てんし)部」といい、あわせて「大腿骨近位部」と呼ぶ。

 東京都板橋区の中核病院である高島平中央総合病院では、股関節周辺骨折の手術を年間約230例以上と、都内でもトップクラスの手術数を実施している。同院院長で整形外科の島峰聡医師はこう話す。

「大腿骨近位部骨折の9割以上は救急搬送です。施設からの救急要請も頻繁にあります。近年では90歳以上の方の手術も珍しくありません」

 整形外科医は多忙をきわめるが、搬送されてきた患者の全身状態を考慮して、できる限り早く手術することが寝たきりを防ぐ道だと島峰医師は強調する。

■高齢者に増加する転倒骨折再骨折のリスクも大

 日本整形外科学会では毎年、大腿骨近位部骨折の発生件数を全国調査している。2015年は、9万3125人が受傷し、図のように過去最高を更新し続けている。日本臨床整形外科学会理事長で田辺整形外科医院理事長の田辺秀樹医師はこう話す。

「転倒骨折が増加し続けているのは、ただ高齢者が増えているからという理由だけでは説明できません。海外では高齢化が進んでいても、転倒骨折を減らせている国もあります。日本で予防や対策がうまくいっていないことが原因の一つと考えられます」

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