昨年毎日ファッション大賞話題賞を授賞した、“貴族”佐藤天彦名人のファッションへのこだわりとは?(写真:毎日新聞社)
昨年毎日ファッション大賞話題賞を授賞した、“貴族”佐藤天彦名人のファッションへのこだわりとは?(写真:毎日新聞社)
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 藤井聡太四段や加藤一二三九段の活躍で盛り上がる将棋界。個性豊かな棋士たちの中で、「貴族」と呼ばれる現名人がいることを知っていますか? ファッションが個性的なのがそのゆえんなのですが、著書『理想を現実にする力』でも明かしていた“貴族ファッション”のルーツとは。最近ヘビロテ中のファッションアイテムや、特にチャレンジした一着も紹介します。

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 貴族。これが私のニックネームです。面と向かって貴族と呼ばれることはほとんどありませんが、将棋関連のサイトで貴族という言葉が出てきたら、それはほぼ、私のことです。

「貴族」という愛称を授けてくれたのは棋士の佐藤慎一さんで、昔から仲良くしてもらっています。余談ですが、ギターがとても上手で、文章のセンスが抜群です。

 この愛称が定着したのは、間違いなく私の好むファッションのせいでしょう。好きなブランドは、アン・ドゥムルメステール。ベルギー生まれの女性デザイナーが立ち上げたブランドで、黒をベースにして中近世ヨーロッパを思わせる装飾が適度にほどこされたデザインが特徴です。私はこのブランドの大ファンで、所有している服の数はすでに百を超えています。私がファッションに興味を持ったのは高校生の頃、周囲に比べて自分は「イケていない」と自覚した頃です。

 アン・ドゥムルメステールとの出会いは、2009年のコレクションを見たことでした。一目でいいなと感じたのですが、実際に愛用するようになるまでには少し時間がかかりました。高額であろうことは想像がつきましたし、その服が素敵に見えるのは格好いいモデルさんが着ているからというのもわかっていました。

 それに、ファッションにアン・ドゥムルメステールのような世界観を求めると、周りに理解されないのではないかとも思いました。シンプルなカジュアルが流行しているいまは特に、個性的すぎず清潔感があるほうがおしゃれと言われます。アン・ドゥムルメステールは個性が強いですから、その道を選ぶことは、おしゃれを通り越して変な人と思われるかもしれないとすら考えました。

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