東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。だが、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、看護師や理学療法士も不足していることを明かしている。首都圏におけるその現状とは。
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高齢化が進む日本で、コメディカル(医師・看護師以外の医療従事者)の必要性は益々高まります。
特に注目しているのは理学療法士です。理学療法士とはリハビリテーション(以下、リハビリ)の専門家です。
リハビリは急速に進歩しています。かつて、リハビリと言えば怪我や脳卒中の回復期を主な対象としていましたが、最近では心筋梗塞や呼吸器疾患、さらにがんの手術後などにも行われるようになっています。最近は高齢者の寝たきり予防に、大きな期待が寄せられています。高齢者が怪我をしたり病気になったりした場合、早くリハビリを始めれば、それだけ効果が期待できるからです。
この理学療法士が首都圏で不足しています。
関東地方の人口1000人あたりの理学療法士数は0.53人です。これは全国最低ランクです。理学療法士も医師や看護師同様に西日本に多いのです。たとえば、中部地方は0.73人、近畿地方0.78人、中国地方0.91人、四国1.2人、九州1.2人です。九州は関東地方の倍以上です。
東京都の不足は深刻で、人口1000人あたり0.49人しかいません。東京都で専門家を養成し、首都圏に派遣するどころか、周辺地域の優秀な理学療法士が東京都に吸い寄せられる可能性もあります。
今後、団塊世代が高齢化し、急速にリハビリ需要が高まります。高齢者は転倒して骨折すると、しばしば寝たきりになります。そうならないためには、手術など適切な治療を受け、早期にリハビリを開始しなければなりません。ところが、首都圏にはリハビリをしようにも指導してくれる専門家が足りません。