さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第33回はミャンマーのマンダレー空港から。
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マンダレー空港は市内からかなりの距離がある。空港行き乗り合いバンは、乾燥した土地につくられた道を延々と走る。1時間半……。少し遠くにつくりすぎたのではないか、とつぶやきたくなる。
ミャンマーに電子ビザが導入された。大使館のサイトにアクセスし、申請ファイルを埋めて送信し、50ドルの代金を払うと、ビザが送られてくる。それをプリントし、入国時に持参する。システムとしては整っていると思うが、ネックは航空券である。ミャンマー出入国の航空券をもっていることが条件なのだ。ミャンマーの国際空港はヤンゴンとマンダレーのふたつしかない。
飛行機でヤンゴンに入った。しかし出国は陸路で隣国のタイに出るつもりだったから、航空券はない。そこで旅行代理店にダミーの航空券をつくってもらった。つまりは嘘チケットである。
ヤンゴンに飛行機で到着し、ヤンゴンから飛行機で出国する。その形を整えてミャンマーに入った。しかしミャンマーでの仕事が手間どってしまった。陸路国境を通ってタイに出国する時間がなくなってしまった。しかたなく、インターネットをつなぎ、マンダレーからタイのバンコクに戻る航空券を買った。
いったいどこまで記録されているのかがわからなかった。ヤンゴンで入国したとき、ヤンゴンから出国するという記録があれば、少々もめるかもしれなかった。
「どうしてマンダレーから出国するのか」
うるさい出入国審査官なら訊いてくるかもしれなかった。
マンダレー空港のイミグレーション。そっとパスポートと搭乗券を出す。すると瞬く間に出国スタンプが捺され、パスポートが戻ってきた。急に気分が大きくなる。