●秋の臨時国会は最大のテーマはカジノ

 そして、今、最も期待されているのが「カジノ」である。森友、加計、PKO日報などのスキャンダルの陰に隠れて、人知れず準備が進められ、8月1日には「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~『観光先進国』の実現に向けて~」という報告書が特定複合観光施設区域整備推進本部に提出されている。特定複合観光施設区域整備推進会議とは、要するにカジノ推進のための有識者会議だ。

 カジノについては6月の本コラム「小池百合子氏が東京都議選の争点からカジノを消したワケ」に書いた通り、一言で言えば、今世紀最大の新利権創出というのが、その政治的な意味合いである。今後これだけおいしい利権が誕生することはまずないだろう。

 報告書の中で、「世界最高水準の規制」と銘打った部分では、これでもかというほどの規制が列挙されている。規制がたくさんあるというと、「そんなに厳しいのか。それなら安全だ」となりそうだが、実はそうではない。規制が多ければ多いほど、官僚と族議員の暗躍する機会が増えて、利権が増えるのである。もちろん、国民を守るための規制ではなく、カジノ業者を儲けさせ、彼らから上前を撥ねるための規制なのだ。

 そもそも、そんなに厳しくするというなら、最初からカジノなど作らなければいいのだが、そうはならない。カジノなどなくてもものすごい勢いで外国人観光客が増えている。その多くは日本の自然、歴史、伝統文化、食、ファッションなどに魅せられて訪日するのだが、そういう人たちが、カジノを欲しているかというと、そんなことはない。むしろ、そういうニーズと比べるとカジノは対極にあると思われる。カジノなどなくても、この先、どんどん観光客を増やすことは可能だ。

 それにもかかわらず、カジノを推進するのは、利権を作るためにどうしても必要だからだ。そして、カジノを実施するためには、「カジノ実施法」が必要だ。この法律でいわゆる統合型リゾート全体を所管することになると予想されるのが、公明党の石井啓一国交相である。おいしい利権を公明党にしっかり分配することで、カジノ消極派が多い同党にアメを与える作戦だ。

 安倍政権のアジェンダには、今のところ、冒頭の有識者A氏が期待するような「改革」の目玉はない。気づいてみれば、秋の臨時国会は「カジノ国会」……。
という状況になるのは確実と言っても良いだろう。

 そうなれば、安倍政権の成長戦略には、「原発」「武器」そして今回登場した「カジノ」の3本の矢しかないということがはっきりする。そんな「経済最優先」政策を有権者がどう見るのか。安倍政権の支持率回復の道はかなり険しいと見た方がいいだろう。(文/古賀茂明

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