国家戦略特区を推進するある有識者(A氏としておこう)から私のスマホにショートメールが入った。加計学園問題が燃え盛り、安倍内閣の支持率が急落するさなかの7月18日のことだ。
このコラムの読者はご存じのとおり、私はその前日の17日付で、本コラムに「加計学園選定に『一点の曇りもない』という民間有識者のしたたかさ」というタイトルで国家戦略特区の有識者と安倍政権の関係について記事を書いた。どうやら、その記事が、この連絡のきっかけになったようだ。
7月28日夜、赤坂の居酒屋でA氏と会って、いろいろと話を聞いた。
A氏はもちろんバリバリの規制改革派である。彼は、加計学園の獣医学部新設を認める規制緩和を進めた手続きには一点の曇りもないことを強調した。しばらく加計学園問題について議論をした後、私は、安倍政権の改革への姿勢について、日ごろ考えていることをA氏にぶつけてみた。すると次のような答えが返ってきた。
「安倍首相自身は、改革派でも何でもないことは百も承知だ」
「安倍首相にとっては、憲法改正や集団的自衛権行使などの安全保障問題が最優先なのだが、支持率を維持するためにイメージ戦略として改革派を演じている」
「安倍首相はこれまで大きな改革は行っていないし、A氏ら真の改革派がやりたいことはほとんどできていない」
「ただし、支持率が急落したので、安倍政権としては、これまでよりは真剣に改革を進めざるを得ないところに追い込まれている」
「今後は、その機運を逃さず、安倍政権に、大きな改革に挑戦させるような世論づくりをすることが重要なので協力してほしい……」
概略そんな話だった。
安倍政権のブレインでも、さすがに安倍首相が「改革派」だとはみていないということだ。それとともに、彼は、日本のメディアが、規制改革についてほとんど理解する能力を持たず、また、日本経済に対する危機感がほとんどないことを嘆いていた。こうした見方は、基本的に私も同意できるところだ。
●行政改革担当相を知っている人はいますか?
8月3日、安倍首相が支持率回復のために行った内閣改造では、苦しくなった時の決まり文句「経済最優先」の呪文がまたも唱えられた。しかし、この布陣では多くは期待できない。とりわけ、「規制改革」や「行政改革」が進む可能性はほとんどないというのが率直な感想だ。
安倍首相が「改革派でも何でもない」というA氏の言葉を裏付けるのは簡単だ。
まず、「今、行政改革担当大臣は誰か」と聞かれて答えられる人がいるかどうかを見てみればよい。
例えば、第1次安倍内閣では、渡辺喜美行革担当相が行革や公務員改革で大活躍した。民主党政権でも、仙谷由人行政刷新担当相、蓮舫事業行政刷新担当相が脚光を浴びた。