「バレンティンが(言葉の通じない)チームメイトとうまくコミュニケーションを取っているのを見て驚いたよ。日本で簡単に友だちをつくっていたけれど、それこそがキュラソー人の長所だ」
オランダ領キュラソーは南米ベネズエラの北方60キロにあり、人口は約15万人。国土面積は種子島と同じくらいだ。
この小さな島から昨今、ドジャースのクローザーを務めるジャンセンや、メジャーリーグのショートで最高の守備力を誇るシモンズ(エンゼルス)など、数々の名選手が育っている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、総人口に対するメジャーリーグへの輩出率(13年)ではドミニカ共和国(12万5000人に1人)、米国(50万3000人に1人)を抑え、キュラソーは2万1000人に1人とはるかに高いのだ。
要因として考えられるのは、中南米諸国に共通する身体能力の高さ、常夏で1年中練習できる好環境に加え、キュラソーならではの背景があると前述のココ記者が指摘する。
「キュラソーにはヨーロッパやラテンアメリカ、それにカリブ海の文化があり、多くの中国人が住んでいるのでアジアの文化もある。多様性が存在しているんだ。外国人とも日常的にコミュニケーションを図っているから言語や人種間のバリアを簡単に乗り越え、誰とでもコミュニケーションをとることができる。ほとんどのプロ野球選手はMLBでマイナーリーグからプレーすることになるため、通訳がつかないから自分でコミュニケーションをとる必要がある。1人で端っこで座っているのではなく、コミュニケーションをとってチームメイトといい関係を築いていくのは大切なことだ」
キュラソーにプロリーグはなく、オランダ本国出身の選手にとっても目指す先は米国や日本だ。その際、言語力やコミュニケーション能力は大きな武器となる。
一方、各球団にとって望ましいのは長く活躍してくれる選手だ。スカウティングをする際に技術だけでなく性格や育った環境を見るのは不可欠で、特に日本のように独特な文化を有する国に適応できるかのカギとなる。
バレンティンは今季が来日7年目で、バンデンハークは3年目。彼らのようにオランダ人選手の多くが日本で活躍してきたのは、確かな理由があると言えるのだ。(文・中島大輔)