「黒子のバスケ」「ハリー・ポッター」シリーズで声優として活躍する小野賢章(31)さん。子役時代から長いキャリアをもつ小野さんが、忘れられないと語る赤面エピソードを「みんなの漢字」7月号で語った。
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俳優の仕事にしても声優の仕事にしてもそうなのですが、役を演じるにあたり大事にしているのは、自分の第一印象、直感です。例えば、アニメならキャラクターの絵を見たときの、「この子は明るそうだな」といった、視聴者の方も作品に最初に触れたときに抱くようなイメージがありますよね。見た目が明るそうな役なのにすごく暗い感じでしゃべるといったギャップが面白い場合もありますが、基本的には、“作品を観る方々が、その役に対してどんなものを求めているのか”というところになるべく忠実に役作りをしています。
作品の時代背景などについても、勉強しながら役のイメージを膨らませていきますが、最終的にどんな演技をするのかは、現場で固めることが多いですね。僕だけがガチガチに役を作っていっても、周りの方と合わなかったら意味がなくなってしまう。「友達がこう話しかけてくるなら、受け答えはこういうふうになるはずだよな」だとか、現場で周囲とのバランスを見ながら演じています。
とはいえ、役者として譲れない部分もあるので、台本や演出に対して、「ここだけはこう演じたい」と思うこともあります。そういう場合は、どうやったらスタッフさんの要望に応えられるかを考えて、演技を組み立て直したり、監督さんと納得いくまで話し合ったりもします。このこだわりがないと、“吹き替えマシン”みたいになっちゃいますから(笑)。
さまざまな作品に関わるなかで、いつもたくさんの漢字に出合いますが、読み方を勘違いしていた漢字も結構ありました。特に印象深いのが、「出汁」を「でじる」と読んだことですね(笑)。戦国時代が舞台のゲームで徳川家康を演じたときの話ですが、汁物が出てくるシーンで、「でじるがよく利いてておいしい」って、すごくロマンチックな雰囲気だったのに、間違えちゃいました(笑)。「すいませ~ん、それ、『だし』です」と指摘されたのがすごく恥ずかしくて、ずいぶん前の出来事ですが、いまだに忘れられない思い出です。
そんなこともあり、台本を読むときに欠かせないのが辞書。スマホのアプリでは、普通の辞書とアクセント辞書を併用しています。僕は転勤族の家庭に育ったので、自分ではこれが標準語だと思っていても、いろんな土地のイントネーションが交ざっていたりするんですね。アクセント辞書は声の仕事をたくさんいただくようになってから買ったのですが、今でも使うので、「やっぱり日本語って難しいんだな」と実感しています。(文/古知屋ジュン)