要するに、寝る90分前に入浴をすませると質の高い眠りが期待できる。深夜0時に寝たいなら、夜の10時半にお風呂から上がるのがベストタイミング。ちなみに、温泉だとより深部体温が上がりやすく、そのぶん大きく下がるのでさらに効果的。その際、湯疲れしにくい炭酸泉がおすすめだ。
■エアコンはつけっぱなしで。「もったいない」はNG
忙しくて寝る直前にしか入浴できないという場合は、体を温めすぎないようシャワーのみにとどめておくと、短時間で深部体温が元に戻る。あるいは、足だけをお湯につける「足湯」も、入浴後直ちに熱放散を促して深部体温を下げるので忙しい人にはおすすめ。女性に多いのが、冷え防止のため靴下を履いて寝るというケース。寝る前に足を温めるのは理にかなっているが、そのままだと深部体温を下げる熱放散が妨げられてしまう。靴下は寝るときには脱ごう。
体温調節機能は加齢に伴って衰えるので、室温や湿度も重要。就寝後、エアコンを完全に止めてしまうと、不快な室温や湿度のために目が覚めたり、熱中症などの病気につながったりすることも。
「もったいないと思うかもしれませんが、健康を損なうほうが不経済。高齢の方ほどエアコンで最適な室温と湿度を保つことが大切です」(同)
ちなみに、夜10時から深夜2時ごろまでは「成長ホルモンが多く分泌されるので、この時間に眠っていると美肌になる」ともいわれるが、分泌は時間帯ではなく、入眠してから最初の睡眠周期(レム睡眠とノンレム睡眠のサイクル)に起こる。入眠スイッチをしっかり入れて、最初の90分程度で質の高い睡眠を得られていれば、時間帯にこだわる必要はない。
良い眠りのためには良い覚醒も必要。目覚めたらしっかり朝日を浴び、日中は外出するなど適度に体を動かし、夕方以降はリラックスして寝るまでの行動をルーチン化して。昼夜のリズムを意識して、快眠生活をはじめよう。(文/森田悦子)
西野精治(にしの・せいじ)
スタンフォード大学医学部精神科教授。同大学睡眠生体リズム研究所所長。過眠症のひとつ「ナルコレプシー」研究が専門。著書に『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)