「ほかの武道と同様に、すべての学校が銃剣道を取り入れるわけではないと思います。銃剣道の経験がある教員がいる場合は、その方が指導する形で授業に取り入れることもあるでしょう。授業でやりたいが指導者が見つからないという場合、全日本銃剣道連盟からその地域の指導員を派遣することもあり得ます」
ちなみに全日本銃剣道連盟の指導員のほとんどは自衛隊出身者だ。
銃剣道の用具は非常に高価という指摘もある。報道では一揃えで30万円前後とも。剣道の入門用セットなら5万〜10万円程度だ。競技者の負担になることはないのか。
「30万円前後というのはおおげさです。値段はピンキリで、入門用なら10万円前後で揃います。また、少年の場合、剣道の用具を流用することが認められています。始めるための敷居が高いとは思えません」
とはいえ、銃剣道がこうもやり玉に挙げられる最大の理由は、やはりその軍国的なイメージに対してのものだろう。競技者たちは「戦前の戦技的内容は完全に払拭されている」と口を揃えるが、戦中の軍事教練に用いられていたという背景がある以上、市井からある程度の色眼鏡で見られることは避けられないのかもしれない。
渡邉さんも「それは承知している」と語った上で、銃剣道の展望についてこう述べた。
「銃剣道の成立は昭和16年。日本武道協議会加盟団体の実施種目9種(柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道)のなかで、もっとも歴史が浅い競技です。そのため武道において大切な礼儀・作法がおろそかな競技者も少なくない。礼儀や所作がなっていなくても、勝てばいい、という考え方を全員に改めて欲しい。競技として成熟していくためにも、礼儀などの精神的な面をより確立していく必要があります」
もちろん、銃剣道を習う人々のほとんどは競技を愛し、信念を持って打ち込んでいる。その姿勢や競技そのものを否定するつもりはない。だが、いわば発展途上にあるこの競技が本当に中学校教育に適切なのか、慎重な議論が必要だろう。
(AERA dot.編集部・小神野真弘)