銃剣道が注目を浴びている。文部科学省が3月31日に告示した新学習指導要領で、中学校体育の武道種目として新たに明記されたためだ。(銃剣道は2012年の段階で、指導要領の「その他の武道」に含まれており、今回新たに追加されたわけではない)
銃剣道に対する批判は辛辣だ。
毎日新聞電子版は<ネット上では(中略)「戦前回帰だ」「人殺しの技術を教えるな」など疑問や不安の声が上がる>(2017年4月8日)と報じた。軍事ジャーナリストの清谷信一氏によると「競技人口3万人の内、約9割が自衛官である。つまり市井の競技人口は3千人程度で、全国の中学で教えようにも人材がいない」「中学はもとより、自衛隊で銃剣道を行うこと自体、メリットよりも害の方が多い」などなど。
こうした声に対して銃剣道の競技者たちからの反応は聞こえてこない。実際のところ銃剣道とはどんな競技なのか。そして、競技者たちは現状をどのように受け止めているのか。それを探るため、剣道初段・歴9年の記者が稽古に参加してみた。
■稽古場には子どもの姿も
「ククイ博士が倒せないんだよー」
「今はそんなキャラおるんか」
「えー、知らないのー?」
大学生くらいの青年に、子どもたちがじゃれつきながら、ポケモンの話に花が咲く。ある日曜日、東京都墨田区総合体育館の武道場。東京都銃剣道連盟東部支部の定例稽古を訪れると、そんな光景に迎えられた。武道場には、記者を含め12人。女性の姿はないが、小学生からお年寄りまで、幅広い年齢層の人々が道着をまとって練習開始を待っている。
「東部支部の会員は約40人。そのうち現役の自衛官は2名、自衛隊のOBは14名です。今日の参加者は、6人が自衛隊のOBですが、残りは一般の人。高校時代に銃剣道部に所属していて、身体を鍛えるために続けている場合が多いですね」。そう語るのは、同支部支部長の渡邉正一さん(55)。全国大会の優勝経験もある銃剣道の達人で、陸上自衛隊を昨年定年退職したばかりだ。
軍国的、という先入観があったためだろうか。先の子どもたちの振る舞いが示すように、武道場の和気あいあいとした雰囲気が少なからず意外だった。職場や家庭の世間話で笑い合い、闖入者である記者にも快く挨拶をしてくれる彼らはどこまでも普通の人々だ。