安倍政権が誕生してから4年半近くが経過した。
その間、安倍総理は、絶えず高支持率を保ち、「安倍一強」の世界を築き上げてきた。
その支持率を背景に、これまでの自民党政権では難しいと考えられてきた政策も次々と実現している。結果を出す総理という意味では、歴代首相の中でも上位にランクされるのは確実だ。
しかし、その具体的な成果と言えば、国家安全保障会議設立、特定秘密保護法制定実施、武器輸出三原則廃止、集団的自衛権行使容認、PKO駆け付け警護など新任務付与、連続的原発再稼働……という軍事・核大国を目指すものばかりが目立つ。
経済を見ると、唯一、アベノミクス第1の矢の金融緩和で、就任1年目に株価を大幅に上昇させたことと労働力人口減少もあって実現した失業率の大幅な低減くらいである。ただし、実質賃金は、政権発足時から大幅に減少したままで、発足時の水準に戻すのはほとんど無理な状況だ。
こうした、軍事優先の政策推進の当然の帰結として、女性の内閣支持率が男性の支持率に比べて明確に低いという現象が生じている。女性は男性に比べて平和志向が強い。女性の支持率が低いと、安倍総理の悲願である憲法9条改正などへの賛成が減ってしまい、その実現が危うくなる。
憲法改正と列強のリーダーを目指す安倍総理にとって、最も重要なことは支持率を高水準に維持すること。そのためには、有権者の過半を占める女性の支持を獲得することは、最優先課題である。
もちろん、官邸はそのことを一番よく理解している。そこで、安倍政権は、早い段階から、「女性の味方―安倍晋三」というイメージ戦略を強力に展開してきた。
●「3年間抱っこし放題での職場復帰」は大ブーイング
その第一歩が、2013年4月に行った「成長戦略スピーチ」で、安倍総理が嬉々としてアピールした「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」だ。
しかし、この作戦は見事に失敗に終わる。
働く女性を中心に大ブーイングが起きたのだ。批判の材料は極めて多数に上るが、主なものでは、「この政策を本当に実施すれば、おそらく3年間育休を取るのは女性が大半ということになる」「そんなことをすると、仕事のスキルや勘が失われ、キャリア形成にマイナスになる」「会社や職場の負担が大きい」「無給ではやっていけない」「男性の家事参加やそのための労働時間短縮・有給休暇取得促進などほかにやるべきことが山積しているはずだ」「育休1年だってとれない非正規社員のことを考えているのか」などというものである。