2015年1月23日に報道ステーションで、私は、後藤健二さんを救いたいという一心で、「I am not ABE」のプラカードを掲げて発信しようと発言した。(これは、同年3月27日に同内容のフリップを実際に提示したのに先立つこと2カ月のことである。詳しくは拙著『日本中枢の狂謀』参照)

 後藤さんは、戦争の犠牲になる女性や子供たちの映像を世界に伝えて、戦争の悲惨さを知ってもらい、世界平和への貢献をしたいという強い思いでシリアに旅立った。その後藤さんを見殺しにし、夫人の必死の思いを踏みにじった。それは、弱者に背を向ける安倍政権の非人道性を如実に表す出来事だった。

 そして、その報道ステーションの放送中に、菅義偉官房長官秘書官の中村格氏(当時警察庁から出向中)からテレ朝幹部宛てに抗議のメールが届いたのである。

●共謀罪を優先して性犯罪厳罰化法案を廃案の危機

 その安倍政権が共謀罪法案成立に猛進している。加計学園問題で追い詰められた安倍総理を守るために、国会を早く閉じるという目的のためである。

 もう読者の皆さんはよくご存じだと思うが、今国会には、性犯罪厳罰化法案(刑法改正案)が提出されている。110年ぶりにようやく改正される大事な法案だ。ここまで、多くの性犯罪被害者の女性が、自分の名前と顔を晒して筆舌に尽くしがたい辛苦を経験しながら、ようやくたどり着いた法案の国会提出だった。

 この法案は、共謀罪よりも先に国会に提出されており、慣例では、後から提出された共謀罪よりも先に審議されるべきものだ。しかし、安倍政権は、この慣例を無視して、共謀罪を優先審議し、国民を不安のどん底に陥れている。

 もしも、安倍総理が、女性の気持ちにほんの少しでも寄り添うことができる人間であったら、決してこんなことはできなかったであろう。この行動を見た多くの女性、いや多くの有権者は、安倍総理の「女性活躍」という言葉がいかにまやかしであるかを悟ったはずだ。

●官房長官秘書官が詩織さん事件当時の刑事部長

 ここまでで、本来はこの記事は終わるはずだったのだが、5月29日に衝撃の事実が明らかになった。

 詩織さんという女性が、元TBS記者で、安倍総理と最も近いと言われるジャーナリスト山口敬之氏に暴行されたこと、そして、山口氏の逮捕状の執行が当時の警視庁幹部の意向で止められたことを記者会見で明らかにしたのだ。その後、当時の刑事部長自身が週刊新潮の取材に対し、自らの関与を認めて一気に疑惑が高まった。

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