定年後、自宅を残すべきか住み替えるべきか。この失敗できない選択は、何を基準に判断すればいい? 週刊朝日MOOK「定年後のお金と暮らし2017」で、国の施策にも詳しい不動産コンサルタント、長嶋修さんに質問してみました。
長嶋修(ながしま・おさむ)
株式会社さくら事務所会長。第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタントの第一人者として、国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。メディア出演、講演、執筆など幅広く活躍中。
■人口減少社会の到来でエリア格差が広がる
これからの日本は本格的な少子・高齢化、そして人口減少社会に突入します。国土交通省がまとめた「国土の長期展望」によると、日本の総人口は2050年に9515万人と現在よりも約3200万人減少し、高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)は約40%に倍増すると予測されています。
人口が減少すれば当然、住宅の需要が下がり、価格も下落します。麗澤大学・清水千弘教授らのシミュレーション分析によれば、40年には日本の住宅価格は10年比で46%も下がるとしています。ただし、この数字はあくまで全体平均であり、分析結果を詳しく見ると、東京をはじめとする7大都市の一部や県庁所在地など、価値が落ちにくい地点もあります。
一般に、人口と世帯数が減少する局面では、人の動きは大きく二つあることが知られています。一つは、都心一極集中。都市機能が整った利便性の高い地域に人が集中します。もう一つは、都心以外の地域で起こる、人口の偏在化。人が集まる地域と、過疎化が進む地域の差が拡大していくのです。その結果、日本の住宅価格は中長期的には「価値が落ちない・あるいは上がるもの」「緩やかに下がり続けるもの」「無価値・あるいは維持費等を考慮すると価値がマイナスになるもの」に、大きく3極分化すると予想されます。
多くの人にとって気がかりなのは「自分が今住んでいる家の資産価値は将来どうなるのか」という点でしょう。その有力なヒントになるのが、15年8月に施行された改正都市再生特別措置法にもとづいて全国の自治体で策定が進められている「立地適正化計画」です。