「(金崎は怪我していた)足の状態もまずまずというところだったので、どういうタイミングで出そうかなとは思っていたんですけど、点を取りに行くしかない状況になってしまったので、思ったよりは少し早く出る形になりました」

 そう語った石井監督は準々決勝と準決勝でも金崎を途中投入し、後半に勝負をかけるためのジョーカーとして起用。8月20日の湘南戦では途中交代に不満を表す態度を取ったことが問題になった(後日、話し合いを持って和解したことが伝えられた)金崎も状況を受け入れ、短い時間に全力を出し切ることで期待に応えた。

 その金崎をスタートから送り出した決勝のレアル・マドリー戦に向けた心理的なマネージメントに関しては「私からは意図して何か特別なことはやっていません」と語るが、日頃から選手間でコミュニケーションを取る環境作りも監督の重要な仕事であり、そのマネージメントを心がけることも簡単ではないはずだ。

 キャプテンの小笠原満男を後半途中に交替させることはプラン通りだが、代わりに誰を投入するか。レアル・マドリーとの決勝ではフィジカルの強いファブリシオを高い位置に入れて攻撃に迫力を出し、その直後にはロングパスにファブリシオが飛び込み、クリアに出たGKケイラー・ナバスとDFセルヒオ・ラモスが接触する状況を招いた。

 さらに80分すぎから鹿島が押し込む状態になると、準決勝でゴールを決めた若手FWの鈴木優磨を入れて得点の可能性を高めた。そこから惜しくもゴールならず、延長前半に3枚目のカードを切る前に一瞬の隙を突かれて勝ち越しゴールを許したことは石井監督にとっても誤算だったかもしれない。

「選手はあのレアル・マドリーに120分間真っこうから戦ってくれたので、私の力不足じゃないかと思います」

 そう振り返った指揮官にとっても初めての国際的な大舞台だった。「来年はACLに優勝して、アジアの王者としてまたこの舞台に立ちたい。選手もそう思っていると思います」と語る石井監督がJ1王者をいかに強化していくのか。今回のクラブW杯で躍進した鹿島だが、実はまだACLのタイトルを獲得していない。その道は長く険しいはずだが、来年の今ごろ、50歳を迎える日本人監督がUAEの地(2017年クラブW杯開催地)でテクニカルエリアに立っていることを期待したい。(文・河治良幸)

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