財産があればそれだけ詐欺被害や無駄な買い物をくり返すなどの金銭トラブルが起きる可能性が高くなる。また、子どもが複数いる場合、財産を管理している人が、ほかの兄弟姉妹から使い込みを疑われることなどもある。
また、表さんは成年後見制度の中でも任意後見の利用をすすめる。
「自分の意思で後見人候補者を選ぶことができるほか、法定後見とは異なり、必ず後見監督人がつくので、後見人の使い込みなどのトラブルを防げます」
法定後見は、本人が知らない人や望まない人が後見人に選ばれることがある。
「任意後見では、専門家が後見人になる場合でも、後見がスタートするまでにご本人との信頼関係を築くことができます。後見人の立場からいっても知っている方の後見をすることは、やりがいにつながると思います」(表さん)
実際には後見開始前の見守りは、任意後見人の職務ではない。そこで、別途「財産管理契約」「見守り契約」などを結んでおけば、後見開始前でも任意後見人と定期的に話す機会ができ、その間に信頼できる人かどうかを見極められる。専門家だからと安心して契約を結んだらいつの間にか財産の一部をだましとられていたという事件もあるので、事前に信頼できるかどうか、実感しておきたい。
また任意後見では、任意後見人に将来の生活、医療、介護に関する希望を事前に伝えておける。意思は、エンディングノートなどに記しておくほか、データベースに登録できるサービスもある。(取材・文/中寺暁子)
■任意後見と法定後見で悩んだときのチェックポイント
<相続人>
・相続人が1人のみ。または2人以上で関係性が良好 → 法定
・相続人がいない。相続人が2人以上で関係性が悪い → 任意
<財産>
・本人の財産の額が少なく、種類も限られている → 法定
・本人の財産の額が多く、種類も多様 → 任意
<自分らしさ>
・老後の生活環境や介護のあり方、財産の管理・相続人への引き継ぎなどにこだわりがあまりない → 法定
・上記のことにこだわりがあり、自分の意思を事前に伝えたい → 任意
※週刊朝日ムック『すべてがわかる 認知症2016』より