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 現代の韓国。岩山から男が転落死した。刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と彼の部下スワン(コ・ギョンピョ)は、男の妻で中国出身のソレ(タン・ウェイ)を取り調べる。スワンはソレを疑うが、ヘジュンは次第に彼女に魅了されていく──。連載「シネマ×SDGs」の39回目は、人気監督が新たなアプローチで魅せるサスペンスロマンス「別れる決心」のパク・チャヌク監督に話を聞いた。

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 私は思春期のころスウェーデンの推理小説『刑事マルティン・ベック』シリーズに夢中でした。数年前に韓国語版が出版されて久しぶりに読み返し、「こういう刑事を映画にしたいな」と考えたのです。ファンの方は「全然似てないよ」と思われるでしょうが(笑)、インスピレーションの源とは往々にしてそういうものだと思います。

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 刑事ヘジュンと事件の容疑者であるソレは、お互いの感情に気づきつつ、それを押し殺します。私が尊敬する成瀬巳喜男監督の「乱れる」の主人公のように、です。これは「感情を隠している人たちの愛の物語」で、それを表現するためには繊細な仕草や表情、まなざしが重要です。そこで今回はあえて刺激的な描写やエロティックな表現を避けることにしました。

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 特にいまは性的描写や暴力シーンに非常に気を使わなくてはいけない時代です。ただ「芸術における性的描写を完全になくせ」という人はいないと思います。人間が生きていく上で、セックスは非常に重要な要素のうちの一つだからです。ただ創作において、まず「本当にそれが必要なのか」を熟考すること、そして芸術のなかで必ず必要だと判断したときは、表現をすべきだと私は考えています。

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 本作は公平さや善意が必ずしも良い結果にならないことも描いています。刑事ヘジュンは人に対して偏見なく、常に公平な目と態度で接しようと努力をしてきた人です。直感でソレを疑う部下スワンに「若くて美人で外国人なら被疑者になって当然か?」と言う。それに対しスワンは「それは(男に対する)逆差別じゃないか?」と言い返します。正しく見えることも、見る人によっては逆に感じるものです。どのような結末が待っているか、ぜひご覧いただければと思います。(取材/文・中村千晶)

パク・チャヌク(監督)朴 贊郁/1963年、韓国・ソウル生まれ。「オールド・ボーイ」(2003年)で第57回カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞。代表作に「渇き」(09年)、「お嬢さん」(16年)などがある。17日から全国で公開 (c)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
パク・チャヌク(監督)朴 贊郁/1963年、韓国・ソウル生まれ。「オールド・ボーイ」(2003年)で第57回カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞。代表作に「渇き」(09年)、「お嬢さん」(16年)などがある。17日から全国で公開 (c)2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

AERA 2023年2月13日号