70キロ級代表の田知本遥(ALSOK)はロンドンに続く出場。しかし、この4年間は山あり谷あり。若手のヌンイラ、新井に世界選手権代表の座を譲るばかりか、国際大会の直前に、禁止薬物が含まれる市販の風邪薬を不用意に服用して現地から帰国させられ、「強化選手としての自覚に欠ける」と処分を受けた。代表決定後の会見で「一時は『オリンピック(を目指す)』を口にできない時期もあった」と語ったが、ライバル新井との直接対決で勝ち、代表の座を奪還した。2大会連続で出場を逃した姉のぶんも、そして自身の4年前の無念も晴らすような戦いぶりを期したい。
78キロ級は昨年の世界選手権王者の梅木真美(環太平洋大学)。世界選手権以降は、いまひとつの成績の彼女だが、高校時代(阿蘇高)を過ごした熊本、出身の大分が震災に苦しむ今、地元を元気づけるような奮起が求められる。
そして、17日の皇后杯で決定した78キロ超級の代表は、山部佳苗(ミキハウス)。最後まで代表を争ったのは70キロ級代表の田知本遥の姉・田知本愛だ。昨年の世界選手権では山部は銅、田知本は銀。2月に揃って参戦したワールドツアーの上位大会、グランドスラム・パリでも山部は初戦で敗れたが、田知本は世界ランク1位の于頌(中国)を破って優勝。選考レースは田知本がリードされていたが、全日本選抜柔道体重別選手権大会、皇后杯と直接対決で田知本に連勝し「逆転」で代表に選出された。
金メダルを目指すミッション達成のため、日本人同士での国内成績よりも、国際大会での成績、さらに「世界の強豪との対戦成績」にプライオリティが置かれてきた他階級と比べて、「選考基準がブレているのでは」と選考会議において異論も出たが、田知本が皇后杯で膝を負傷し、リオに間に合うかわからない状況もあり、代表の座を得た。選考で揉めただけに「山部を選んで良かった」と言わせる結果が欲しいが、鍵は「メンタル」だ。選考会議でも「安定感なら田知本だが、山部には伸びしろがある。試合中に弱気になって勝ち切れない山部のメンタルが強化されれば、さらに上積みが見込める」との意見が出された。弱気でも世界3位になれた実力の山部のハートが一皮むければ、ミッションも達成できるだろう。
今後、各代表選手は「金メダル」の確率を高めるため、早速5月初旬のワールドツアーに参戦してリオ本番までの世界ランキングを高め、強豪と決勝ラウンドまで対戦しないシード権を獲得することを目指す。
「上位入賞」「メダルを目指す」とは決して口にせず、「金メダル」のみを目指す彼女たちの極限の戦いは、もう始まっている。