■任務を託された戦士7名たち
今回、リオ大会の代表に選ばれたのは、いずれもワールドツアーで成績を残し、世界ランキング14位以内にいる選手であり、他の競技で言えば誰もが「メダル候補」と書かれる実力の持ち主だ。しかし、日本柔道であるので、ここは「金メダル獲得に向けて」という観点で彼女たちを紹介したい。
48キロ級代表の近藤亜美(三井住友海上)は2014年の世界選手権を19歳で制した。本人も「私にあるのは若さと元気と勢い」と口にしていたが、世界中のライバルから研究されたこと、また「世界王者らしく」なろうとして空回りしている時期があったが、ベテランの元世界王者・浅見との代表争いの中で一回り成長した。この階級はモンゴルのムンクバット(世界ランキング1位)、モンゴルからカザフスタンに国籍変更し旋風を巻き起こすガルバドラフ(世界ランキング4位)がライバル。近藤は5月のマスターズ(メキシコ)に出場し、世界ランキングの上積みと、シード権の獲得を目指すが、ここでライバルに勝ち、再び「私には元気と勢いがある」と自信をもって言える状態で本番を迎えたい。
52キロ級代表の中村美里(三井住友海上)は北京・ロンドンに続く3大会連続代表。平成生まれの初めての日本人メダリストとなった北京、膝の怪我を抱えながら代表の座をもぎ取るも、初戦敗退したロンドン。手術・リハビリを経て新たな技術も上乗せし、再び世界選手権を制して迎えるリオは、「3度目の正直」という金メダルに向けしっかりと足元を固めている。
57キロ級代表は、前回大会唯一の金メダリスト・松本薫(ベネシード)。対外国人の成績で35連勝を含む無敵状態だったロンドン前と違い、この4年間は何度も敗戦を喫してきた。しかし、敗戦のたびに「今の私には〇〇が必要」とはっきり口にし、次の大会ではしっかりと課題を克服した姿を見せてきた。「野獣」がキャッチコピーの彼女だが、ダーウィンも驚く進化を見せ続けている。全日本選抜柔道体重別選手権大会では、客席の声援を審判の指示と聞き間違えるというミスで敗れているが、課題の見つかった後には必ず進化してきた彼女。リオではどんなニュー松本をみせてくれるか楽しみだ。
63キロ級代表の田代未来(コマツ)は、世界選手権で2大会連続銅メダリスト。この階級はフランスのアグベニュー、スロベニアのトルステニャクが壁として立ちはだかる。ライバルの胸を借りに、トルステニャクの所属する道場に単身武者修行に行くなど、メダルの色を変えるべく奮闘中だ。「一本を取る柔道」でアテネ・北京で金メダルを獲った谷本歩実さんと同じ階級であり、雰囲気も似ており「谷本二世」と言われる田代は、同じコマツに所属し、谷本氏に日々指導を受ける。谷本同様の観ていて気持ちのよい柔道に注目してほしい。