この制度が導入されて初めてのオリンピックとなったロンドンでは、「日本選手は世界ランキング1位であらねばならない」という「金メダル」と同様の呪縛から、ワールドツアーに選手を出し続けた。その結果、日本選手は疲弊し、ライバル達に自身を分析される情報を与え続けることとなり史上最低と言われる結果を招いた。
その後、不祥事による強化体制の一新もあり、「世界で結果を残しつつ、オリンピックで成果を出す」ために日本柔道ナショナルチームも戦い方を変えてきた。
ワールドツアーで成績を残した選手に、オリンピック出場圏権内のランキングをある程度維持させる一方で、成績を残せなかった選手は派遣対象から外し、国内の大会で成長を見せた選手と入れ替える。こうして、「オリンピック出場権圏内に多くの日本人選手をランクインさせ、選択肢を持つ」ことを目指してきた。
これまでは、代表選考レースの終盤に現れた新星が「若さと勢い」に賭けて選ばれたり、前述のような復帰したベテランが「経験と実績」を買われて選ばれたりしていたが、いまの柔道の仕組みでは「ワールドツアーで結果を残し、ランキング上位に名を連ねた」者だけが、選考の対象となる。
4月2日と3日に行われた全日本選抜柔道体重別選手権大会には現時点での各階級の日本の上位選手8名が出場し「最終選考会」と銘打たれているが、水泳などのそれとは違い、この大会でのみ勝利しても、世界ランキングに入っていない選手はオリンピック代表には選考されない(ただし、今後のワールドツアー派遣選手とするかどうかの選考には影響がある)。優勝した選手がオリンピック代表に選ばれるわけではないのは、こうした背景がある。