部屋に戻り、足にアイシングをしてから朝食。白米、味噌汁、サラダ、塩鮭(焼き魚)、納豆、肉じゃがのような日替わりの副菜が一品か二品にフルーツというのが定番だ。

 朝食後の午前中はボールを使ったフィジカルトレーニング。午後には、筋トレを中心とした体幹やバランストレーニング、ストレッチと続く。それぞれの練習のあとには、クールダウンを兼ねて、併設プールで50メートルほどを流して泳ぐ。これを毎日愚直なまでに
繰り返すのだ。

「確かに毎日続けていくって大変なことだけど、でも、みんなだっていろんな仕事を毎日続けているわけでしょ。努力しているのは、僕だけじゃない。世の中には、僕以上に努力している人はたくさんいるんです。別に僕が特別なわけじゃないと思うけどね。僕はやっぱり恵まれてもいるんですよ。契約してくれるチームもあるし、こうやって支えてくれる人たちもいるわけで」

 海から離れた山中。娯楽施設もない。ひたすら自身の肉体と向き合う日々なのだ。

「東京の日常は忙しすぎる。横浜のクラブハウスまでは移動に30分かかるし、初動負荷のトレーニングをする自分の部屋までまた30、40分は必要。あるいは、銀行へ行かなくちゃならない、誰々が会いたいと言っている、家族に会いに行く、といろんな用事があるから。

 でも、グアムでは人に会う必要はないし、本当に集中力が増すんです。どんどん身体が研ぎ澄まされて、余分なものがそぎ落とされていく感じ。だから、もっと長くいたいぐらいです。気候も文句ないし、グラウンドまでも歩いてすぐだし、走ったあとには、そのままプールに入れる。筋トレルームもすぐ近くにある。ここにいれば移動時間が必要ないし、クルマの運転もしなくていい。煩わしさが一切ないんです」

 飽きることなくコンスタントに練習を続けられること。ケガをしないこと――。プロ選手としてスポーツを続けるための絶対条件をカズはずっと維持しつづけてきた。

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