「90分、2000円で飲み放題、歌い放題ね。女の子が飲んだり、歌えば、その都度500円プラスね。領収書は清算の時ね」

 彼女はそう言い残して、そそくさと席を立ってしまい、また10分ほど待たされた。手持ち無沙汰だったので、どんな客が来ているのか周囲を見渡すと、60年代の男性客がホステスと歓談していた。「ボトル入れたら飲み放題よ」「いいよ。入れなよ」などの会話が弾んでいる。

「待たせたね。ワタシ、マニラから来たよ。よろしくね。どこから来た?」

 席についたホステスはこう言うなり、「何飲む?」と注文を促す。ひとまずウーロン茶を頼んでみた。すると、彼女は上目遣いの潤んだ瞳で見つめてくる。「どうぞ何でも好きなものを」と言わなければならない雰囲気がある。

「どうぞお好きなものを。八王子から来ました。仕事でこの辺に立ち寄ったので。今日は楽しくやりましょう。よろしくお願いします」

 こういう場では定番のあいさつ代わりの言葉を口にすると同時、ホステスがにっこりほほ笑む。

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