■「父の勘」も経験次第!?

「いや、そうでもないんです。たしかに『母の勘』は女性特有の本能かもしれませんが、直感力は人生経験によっても強化されるのです。脳の直感力をつかさどる基底核という部分は、成人後もなお成長を続けることが、最近わかってきました」

 諦めずに経験を積めば、拙者にも鋭い「父の勘」が備わると!?

「それだけじゃありません。最新のイスラエルの科学者の研究によると、母親の分娩時や授乳時に大量に分泌されるオキシトシン(愛情ホルモン)の量が、積極的に育児をし続けた父親も、母親と同レベルまで高まることがわかりました」

 なんと! 母同様に父もわが子と情愛が交わせるとは!

「だからここで諦めちゃもったいない。ポジティブに育児を楽しんで『父の勘』を磨き、お子さんと相思相愛の関係を築いてください」

 御意。拙者、本日より心機一転、再挑戦いたす!

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学薬学部教授。薬学博士。研究テーマは、記憶のメカニズム解明のひとつである「脳の可塑性の探求」。一般の人に向けて、脳の最先端の知見をわかりやすく解説、発信している。プライベートでは2歳の女の子のパパ。著書に『脳には妙なクセがある』(扶桑社)など多数。

※AERA with Baby2015年8月号より抜粋