10月14日、世界ランク6位のブラジル(日本は同48位)をシンガポールに迎えての国際親善試合で、日本は0-4の完敗を喫した。18分にカウンターからネイマールに抜け出されて先制されると、48分にも柴崎岳のミスからショートカウンターを許してネイマールに追加点を奪われる。さらに77分と81分にもネイマールのゴールで、2年前のポーランドでの国際親善試合と同じスコアで敗れ去った。
前日会見でアギーレ監督は6人の交代枠を使うことを明言していた。とはいえそれは、交代で出場する選手のことを意味していると思っていた。10月と11月の2試合は、来年1月にオーストラリアで開催されるアジアカップのメンバー選考の場と指揮官は繰り返し言い続けてきた。ただ、ブラジル戦だけはベストのメンバー、すなわちジャマイカ戦と同じスタメンと思われた。
ところがアギーレ監督は、会見での言葉通り6人の選手を入れ替えてきた。それもスタメンから。正直、ビックリした。なにしろチームの中心選手である本田圭佑や長友佑都、細貝萌といった経験豊富な主力選手をベンチに置いたのである。代わりに起用された森岡亮太、小林悠、田口泰士は代表初のスタメンで、今日が代表2試合目である。太田宏介と塩谷司も2試合目とキャリアの浅さは歴然だ。過去の代表でも前例のない采配と言える。
それでも試合開始15分まではブラジルの攻撃に身体を張って対抗し、ゴールを死守した。劣勢ではあるが守りにリズムが出てきたと思った直後、縦パス1本であっさりとゴールを割られる。そして致命的だったのが後半開始3分に奪われた2点目だ。センターサークル付近で柴崎岳がトリッキーなパスを試みて失敗。ボールがイレギュラーしたのかもしれないが、そこからのショートカウンターでネイマールに追加点を奪われた。
アギーレ監督も「自らのCKから相手のチャンスになってしまい、素晴らしい選手に決められた」とブラジルのカウンターをたたえていたが、収穫をあげるとすれば、このブラジルの攻撃になる。アギーレ監督が目指し、日本がお手本としなければならないカウンターやショートカウンターでゴールを奪うプレーを、身をもって体験できたからだ。
「われわれの目的は変わっていない。アジアカップのためのメンバーを選ぶこと」とアギーレ監督の信念にブレはない。とはいえサッカー王国ブラジルとの対戦を、選手選考の場に使った日本代表監督は初めてだ。もしかしたら現地ブラジルの報道では、本田や長友をスタメンで使わなかったことで「ブラジルを舐めていたから完敗した」と報じているかもしれない。それはそれで痛快ではないだろうか。
(サッカージャーナリスト・六川亨)